The Palace of Art 芸術の宮殿

 

The Palace of Art 芸術の宮殿

 

魂が永遠に安らかに住まうために、
 私は堂々たる歓楽の館を建てた。
私は言った「ああ、魂よ、楽しく飲み騒げ。
 親愛なる魂よ、すべて上手くいくだろう。」

私は磨かれた真鍮のように滑らかな、
 巨大な岩の高台を選んだ。
草深い平らな牧草地の上に
 輝かしい城壁が連なって、突然、光を放った。

私はそれを堅固に築いた。岩棚や崖はむき出しで、
 あるいは曲がりくねった階段になってそびえていた。
私の魂は一人、
 その高貴な宮殿で暮らすのだ。

そして「世界が回り回るとき」と私は言った。
 「物言わぬ王として、遠くから、静かに君臨せよ。
土星が回転するとき、その不動の影が
 輝く環の上で眠るように。」

すぐに私の魂は答えた。
 「私を信頼しなさい、私は至福のうちに
私のために建てられたこの大邸宅に、
 王のように豊かに、広々と暮らすでしょう。」

・・・・・
・・・・・

私は東西南北に四つの中庭を作った、
 それぞれに四角い芝生があり、
そこから泡立つ泉が噴き出し、
 竜の黄金の峡谷に流れ込んでいた。

涼しい緑の中庭の周りには、
 大樹のように枝分かれした回廊が並び、
泉から噴き出す豊かな水の
 響き渡る音が一晩中こだましていた。

そして屋根の周りには金箔の回廊があって、
 野生の白鳥が羽を伸ばすところ、空が
海と砂に沈み込むところまでを
 遠く広く見渡すことができた。

四つの噴出口からの四つの流れは
 山を下る一本の奔流になり、流れ下っては
霧の層になり、落ちるとともに漂って
 虹をかけていた。

そして、どの峰にも
 彫像がつま先で立って、
あらゆる香りの香料の雲を
 金の杯から蒸気のように噴き出しているように見えた。

それで彼女は思った。「この大きな虹が太陽の中で揺れ、
 あの甘い香りが立ちこめるとき、
盲いていない目で
 私の宮殿を見つめるのは誰だろうか?」

なぜなら、あの甘い香りは立ち上って消えることがなく。
 そして、日が沈む時も昇る時も、
金色の柵で囲まれた明るい空中回廊は、
 炎の房飾りのように燃えていたのだから。

同じように、霜のような塔を頂いた、
 アーチが絡み合う暗い小洞窟からは、
深く設置されたステンドグラスが
 ゆっくりと燃える深紅の炎のように見えたのだから。

・・・・・
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私の魂が満ち足りて、
 一日中、部屋から部屋へと渡り歩いたのは
心地よい暗闇に覆われた
 音が長く反響する、数多くの回廊だった。

宮殿には大小の部屋がいっぱいに並んでいて、
 すべてが多様で、どれもが生きた自然が生み出した
完璧なもので、私の静かな魂のあらゆる気分や
 変化にぴったりと合っていた。

けばけばしい夏の朝を描いた
 緑や青のタペストリーが掛けられた部屋があって、
その中では、ベルトを締めた狩人が頬を膨らませて、
 花冠で飾られたラッパを吹いていた。

ある部屋は真っ暗で赤く染まった―砂地だった、
 そこを誰かが一人で歩き回っていた、
低く大きな月におぼろに照らされた大地を、
 彼は永遠に歩き回っていた。

ある部屋には、危険な岩浜と荒れ狂う波が描かれていた。
 壁のような強風の中、轟く洞穴の下で
それが押し上げては引き下がり、
 岩にぶつかっては砕ける咆哮が聞こえるようだった。

ある部屋には、果てしない平原で家畜の群れのそばを
 曲がりくねってゆったりと流れる水量の豊かな川、
雨の筋の影を伴って、低く垂れ込めた雷雲の
 不揃いな周縁部が描かれていた。

ある部屋には、蒸し暑い中で労働に励む収穫者がいた。
 前景では彼らが麦束を束ね、後景には
油が豊富に取れる、
 風に白く染まる高地が広がっていた。

ある部屋には、石と鉱滓の黒い前景があり、
 その先には高地が続き、さらに高い場所では
白く長い雲が尊大な岩山を遮っており、
 そして最も高い場所には雪と炎があった。

そして一つは、イングランドの家―露に濡れた牧草地、
 露に濡れた木々に、眠りよりも柔らかく
たれ込める灰色の黄昏―すべてが整然と保存された、
 昔ながらの安らぎの地である。

これらのみならず、そこには真実が描いたものに他ならない、
 陽気な、重々しい、甘美な、厳しいといった
ありとあらゆる心の気分にふさわしい、
 ありとあらゆる美しい風景があった。

・・・・・
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あるいは、陽の光が降り注ぐ暖かな牧草地で、
 高価な赤縞メノウの枝細工の下に、
幼子を腕に抱いて、微笑みながら座っている
 十字架の傍らの聖母がいた。

あるいは、海辺の透明な城壁の街で、
 金メッキのオルガンのパイプの傍らに、
髪に白いバラを飾った聖セシリアが眠っていた/
 天使が彼女を見つめていた。

あるいは、楽園のポーチに群がった
 一群の乙女たちが
死にゆくイスラム教徒を見るために腰を屈め、
 両手と目で「あなたをお待ちしています」と言っていた。

あるいは、深く傷ついた伝説のウーサーの息子が
 アヴァロンの谷の美しい緑の傾斜地に
朦朧として横たわり、
 すすり泣く女王たちに見守られていた。

あるいは、アウソニア(*イタリア南部)の王が耳に片手を当てて
 足音に耳を傾け
森の精を呼び止めて
 知恵と法について教えてもらおうとしていた。

あるいは、インドのカマ(*若者の愛の神)の玉座が
 ギザギザに尖った山脈や、
ヤシと稲の国を超えて、
 香辛料の香る夏をゆっくりと航海していた。

あるいは、優美なエウロペのマントは留め金が外れて、
 肩から後ろに落ちていた。
片手にはしおれたクロッカスがあった。片手には
 穏やかな雄牛の金の角が握られていた。

そして、頬を紅潮させたガニメデスは、鷲の羽毛に
 バラ色の太腿を半ば埋もれさせ、
一人、流れ星のように
 柱の多い街の上を突っ切って行った。

そればかりではない。生命のそのものが筋書きをした、
 コーカサス人(*インド=ヨーロッパ語族)の至高の心が
自ら自然から彫り出した
 あらゆる美しい伝説がそこにあった。

・・・・・
・・・・・

それから私は塔に、自ら揺れて
 銀色の音色を奏でる大きな鐘を置いた。
そして、王宮の台座の周りに
 選りすぐりの賢者の絵を飾った。

そこには、熾天使のように力強いミルトンがいて、
 隣には、穏やかで温厚なシェイクスピアがいた/
そして、世に倦むダンテは自らの著書を持ちながら
 いくらか険しい笑みを浮かべていた。

そして、他にイオニアの父(*ホメロス)もいた。
 その肌には無数の皺が刻まれていた/
その胸には頬と喉と顎から
 百の冬が降り積もっていた。

見上げれば、沢山の高いアーチが
 美しく荘厳な広間の天井を支えていた、
そして天使たちが昇ったり降りたりして
 贈り物を交換していた。

その下には、この広い世界の、あらゆる土地と時代の
 選りすぐりの人間の物語が
決して失われることのない
 モザイク画で描かれていた。

ここでは人々が、動きの鈍い駄獣のように、
 突き棒や痛みに追われながら、苦労して前進していた/
ここでは虎が戯れに
 王の頭や王冠をあちらこちらと転がしていた。

ここでは競技者が、全ての縛られた力を切り離し、結びつけて
 永続させるために力強く立ち上がり、
そしてここでは、再び病人のように衰えて、
 あらゆる治療に頼っていた。

しかし、彼女はそれらを通り過ぎた。
 大きな鐘が鳴り始めた。彼女は玉座についた。
彼女は輝く出窓の間に座って、
 独り歌を歌った。

そして最の高い出窓の色鮮やかな炎の向こうから、
 神のような二つの顔が見下ろしていた。
賢者プラトンと、額の広いウェルラム(*フランシス・ベーコン、1561-1626、哲学者)、
 知者たちの中の最も優れた者たちである。

そして、彼らの活動が
 変化の豊かな源泉となった名前の全てが、
多様で不思議な意匠とともに
 細い柱の間に美しく飾られていた。

その間からバラ色、琥珀色、エメラルド色、青の光が、
 彼女のこめかみと瞳へとほとばしり、
朝のメムノン像(*音を出すエジプトの巨像)のように、彼女の唇から
 旋律が川となって流れ出た。

ナイチンゲールが、ひとり長々と
 静かな序曲を続けることを喜ぶよりも、
私の魂は、石の柱の間にこだまする
 自らの歌を聴くことを喜ぶ/

祝祭のように陽気に歌い、ささやき、
 生きていることを喜び、
自然の主、目に見える大地の主、
 五感の主として/

自らに語りかける。「これらはすべて私のもの。
 世界に平和があろうと戦争があろうと、
それは私のもの。」
 神聖な若い夜が死にゆく昼を星で飾るとき、

彼女はその美味な労苦を甘美に締めくくり、
 花輪や花冠に光を灯し、
珠玉の三日月に
 純粋な第五元素(*エーテル)の貴重な油を灯し、

天国を模倣した。そして手を叩いて、叫んだ。
 「この王のように豊かで広大な大邸宅における、
私の静かな喜びが、この上なく称えられるなら
 私は不思議に思うだろう。」

「ああ、私の目を様々に満足させる美しいものたちよ!
 ああ、私を心地よくさせる色と形よ!
ああ、沈黙した偉人と賢人の顔たちよ、
 我が神々よ、共に住まう者たちよ!

「ああ、私の神のような孤独よ、
 あの平原で飼われている豚の群れが
日暮れに追い立てられるのを眺めるたび、
 私はお前を完全な利益としか思えない。

「彼らは汚れた沼地で好色な皮をまとい、
 草をはみ、転げ回り、繁殖し、眠りにつく。
そしてしばしば、愚かな悪魔が入り込んで、
 彼らを深淵に追いやる。」

それから「運命」が完全に授与した彼女の権利として、
 道徳的本能について、
そして死からの蘇りについて長々と話をした/
 そして最後に言った。

「私は人の心と行いを手中に収める。
 宗派が何を争おうとも、私は気に留めない。
私は神として座し、いかなる信条も持たない、
 しかし、すべてを熟考している。」

・・・・・
・・・・・

彼女が独り座っているとき、苦悩に満ちたこの世の謎が
 頻繁にその胸を駆け巡った、
それでもなお、彼女は謹厳な陽気さと、
 理知的な王座を保っていた。

こうして彼女は盛んになり、繁栄した。こうして三年間
 彼女は繁栄した。四年目に彼女は没落した。
(*彼を神のようだと称える民衆の)叫び声を耳にした時、
 地獄の激痛に襲われたヘロデ(*アグリッパ1世、BC10-AD44)のように。

その前で彼女がいつも
 人格の底の底まで露わにしていた神は、
彼女が完全に失われ滅びることがないよう、
 彼女に痛切な絶望を与えた。

考え事をしようとも、視線をどこに向けようとも
 混乱が作り出した実体のない手が、
「メネ、メネ(*バビロンの破滅の予言)」と書き記し、
 彼女の思考の王国を完全に分断した。

孤独への深い恐怖と嫌悪が
 彼女を襲い、その気分から
自らへの軽蔑が生じ/そしてまた、その気分から
 自己軽蔑への笑いが生じた。

彼女は言った「何ということ!ここは私が頼りとする宮殿、
 私のために建てられた広々とした邸宅、
私が物心ついた頃から、
 ここには強固な土台が据えられていたのではなかったか?」

しかし、宮殿の暗い片隅には
 ぼんやりした姿が立っていた/そして、彼女が正午に来た時
白目をむいて血の涙を流す幻影、
 そして恐ろしい悪夢、

そして、心の炎を包む虚ろな影の上に、
 そして、額がうっすら腐りかけた
死後三ヶ月の遺体の上に
 壁にもたれて、いつの間にか、それは立っていた。

確かな一つのゴールに向かう
 果てしない前向きの動きの真っ只中で
私の魂は光も動きもない、
 鈍く淀んだ場所のようだった。

打ち寄せる波が
 月に引き上げられた白い水面を陸から引き戻すのを
夜通し聞いている、砂州に閉じ込められた岸辺の
 静かな潮溜まりのようだった。

一斉に踊る星たちとともにありながら、
 それに加わらず、しかし立って、
そして立ったままで、動き続ける「状況」の中空の球体が
 一定の法則に従って回転するのを見ている星のようだった。

彼女の蛇のような誇りは、背後でとぐろを巻いていた。
 「いかなる声も」彼女は孤独な広間で叫んだ。
「いかなる声も、この世界の静寂を破ることはない。
 ただ一つの、深い、深い、静寂を!」

十層もの怠惰な恥辱に包まれ、
 くすんだ土の朽ちゆく芝とともに朽ちてゆく彼女は、
永遠の神に見放され、
 自らの場所と名前を失ってそこに横たわっていた/

そして死と生を等しく憎み、
 絶望のあまり恐ろしい時、
恐ろしい永遠以外の何も見えなかった、
 慰めはどこにもなかった/

恐怖にすっかり混乱して、
 そして、時とともにそれはますます悪化して、
陰鬱な涙にも癒されることはなく、
 罪の中で孤独に生きていた。

崩れかけた墓のような
 堅固な暗闇の壁に閉じ込められた彼女は、
鈍い足音を
 遠くで聞いているようだった。

不安を抱き、途方に暮れて
 異国の地をのろのろと歩いている旅人が、
月が昇る少し前の
 見知らぬ海の低いうめき声を聞いているようだった/

それが雷鳴なのか、
 岩が崩れ落ちる音なのか、
それとも大きな野獣の深い叫び声なのかさえも分からない/
 そして思う「新しい土地を見つけたのに、私は死んでしまう。」

彼女は大声で喚いた「私の内なる火は燃えている。
 しかし何の答えも返ってはこない。
私の罪を消し去って、
 死から救ってくれるものは何だろうか?」

こうして四年が過ぎたとき、
 彼女は女王の衣を脱ぎ捨てた。
彼女は言った「谷間に小屋を建ててください。
 そこで私は嘆き、祈ります。

「しかし、軽やかに、美しく建てられた
 私の宮殿の塔は壊さないでください/
罪が清められたとき、他の人たちと一緒に
 私はそこに戻れるかもしれません。」

 

 

2025.9.25
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/ladyshalott/palaceart.html

| カテゴリー : テニスン | 投稿者 : 上田エリヤ