YAGレーザーによる後発白内障の切開について
後発白内障はよく経験される白内障手術の合併症です。
YAGレーザーによる切開で視力は容易に回復されます。
- 二種類の手技
代表的なレーザーの照射法に①円形切開法と②十字切開法があります。
両者には一長一短があります。
以下を切開前の後発白内障眼とします。CCCのエッジを黒い輪で表し、直径4.5mmとします。青い線の内側を瞳孔領として、直径2mmとします。IOLの直径は6mmです。
①円形切開法はレンズの瞳孔領を傷つけることがありません。しかし、切り取った後嚢片がその場所から動かず、硝子体にレーザーを多数照射しなければならないことがあります。
②十字切開法は照射数が少なくて済みますが、レンズの瞳孔領を傷つけることがあります。よっぽど酷く傷つかない限り症状は出ないようですかが、気持ちが良いものではありません。
- 折衷型手技の提案
筆者の手技を供覧します。
12時の最周辺部から切開を始めます。
次に9時の最周辺部を切開し、瞳孔領を避けて12時と繋げます。
同様に3時最周辺部からの切開を繋げます。
下方からの切開を繋げます。
後嚢片を切り離します。この段階で切開された後嚢は自然に後ろに開いてきます。
後嚢片にくっついている硝子体を切って、後嚢片を下に落とします。
完成です。
以下、この方法をダイヤモンドクロス法と呼ぶことにします。
- ダイヤモンドクロス法の利点
1.十字切開法より安全。
2.円形切開法よりレーザー照射数が少ない。
1については瞳孔領を照射しないので当然です。
2について考えます。
円形切開法とダイアモンドクロス法で照射レーザー数に差が出るのは、切った後嚢片を動かす過程です。
後嚢片に付着している硝子体を切開するのですが、その照射量に大きな違いが出ます。
円形切開で照射する範囲は下図の通りです。上方のみならず、下方にも必要になることがあります。
比較のためにダイアモンドクロス法の場合を再掲します。
もう一つ大事なことは、ダイアモンドクロス法では後嚢片を切離した段階で、周辺部の後嚢が後ろに開くことです。それに引かれて前部硝子体膜が後退するので、硝子体へのレーザーはIOLから離れた場所で安全に照射することができます。
円形切開法ではIOL後面近くのストレスフルなレーザーを余儀なくされることがあります。
- 結論
ダイアモンドクロス法は有益な手技と考えます。
追記:筆者はOcular社のAbraham Capsulotomy YAG Laser Lensを使用しています。
2023.12.1