ダンディー選挙区



THE DUNDEE ELECTION

Kinnaird Hall, Dundee, May 14, 1908

WINSTON SPENCER CHURCHILL

 

ダンディー選挙区(*スコットランド東部)

1908年5月14日、ダンディー、キネアード・ホール

ウインストン・スペンサー・チャーチル

 

 

訳者より:1909年に出版されたチャーチルの演説集”LIBERALISM AND THE SOCIAL PROBLEM”の中の一編です。
原文:https://www.gutenberg.org/files/18419/18419-h/18419-h.htm#THE_DUNDEE_ELECTION

 著作権はチャーチルの死後50年を経た2015年に切れています。
 文中の*は訳者注です。

 

 ダンディー選挙区 

 前任者(*ヘンリー・バナマン、スコットランド出身、スターリング・バラ選挙区)と同様に、スコットランドと強く親密な絆で結ばれている首相(*ヘンリー・アスキス、ダンディーの隣、イースト・ファイフ選挙区)の下に、新しい政権が誕生しました。どうぞ彼にフェアなチャンスを与えてください。彼がつくった政権に、国家という大きな機構を扱う機会を与えてください。そうして下さるなら、新政権が最大多数の最大利益のためにそれを利用することを保証させていただきます。私がダンディーから立候補させていただくようになってから起こったことに、私は十分満足しています。選挙区全域で力が結集されているのがわかります。私は、この島の他の地域の選挙によって、進歩と改革の大義が負った傷を、取り戻す、いや、取り戻す以上の機会を得ていると思います。

 しかし、とても悲しいことが起こってしまいました/ひどいことが起こったのです―自由党がアイルランド自治法案に賛成したのです。The Scotsmanはショックを受け、The Timesは言葉を失い、言葉を失ったというために三列のコラムを書き/あの落ち着いた古い週刊誌The Spectatorは、動揺しながら決して動揺しない場所に戻ってゆき/アルスター統一党(*北アイルランドの親英派)はこれまで政府が持っていなかった信用をすべて失ったと宣言し、これまでどんなことがあっても自由党に投票しなかった何千人もの人々が、どんなことがあっても二度と自由党には投票しないと言い出しているのです。そして私は、この政策における革命に責任があるとされております。

 なぜでしょう、アイルランド問題に関する私の発言は政権のすべてのメンバーが支持し、一ヶ月前(*原注 1908年3月30日)に200票以上の圧倒的大差をもって庶民院で可決された決議の論理的かつ必然的な結果なのです、この決議はアイルランドの現行の統治体制に起因する明白で嘆かわしい悪弊を説明した上で、こうした悪弊の救済策は帝国議会の最高権威に従いながら、それに責任を負う行政機関を持つ代表機関である、と断言したものであります。

 アイルランド問題は現在、1886年当時とは大きく異なる位置を占めております。1880年以来、議会の関心は常にアイルランドに注がれて参りました。議会の関心が常に一つの対象に注がれている場合、実を結ばないことはほとんどありません。この25年間でアイルランドは大きく変化しました。ソールズベリー卿が「自治法案そのものよりも悲惨なことになる」と仰った地方自治の大計画が実施されるのを私たちは目の当たりにしました。1886年に自治法案を何よりも傷つけることになった土地購入計画(*政府が地主から土地を買い上げて小作農に売る政策)がユニオニスト(*統一派)政権によって完全な帰着には至らないまでも、実行に移されるのを目の当たりにしました。これらは偉大な出来事であり/当然ながら、その結果は私たちを前進させ、後戻りしないよう勇気づけるものであった、と私は思っています。これらの出来事はアイルランドに有益な結果をもたらし、アイルランド問題はもはや80年代前半のような悲劇的な様相を呈してはおりません。それは英国にも影響を及ぼしました。イギリス全土で、人々は事前にイギリスの統一性と完全性を損なうと言われていた法案―土地法案と地方自治法案―が可決されるのを見て/これらの措置から予測されていた悲惨な結果からはほど遠い、その法律から大きな利益がもたらされたことに―ここにいらっしゃる皆さんと同様に―気が付いたのです。多くの人々が、この出来事によって将来への一歩を踏み出す勇気を得ました/さらに励みとなるものを探すとするなら、神のみ恵みのもと、南アフリカにおける我々の政策に伴って、簡単に永遠の仲違いをしかねなかった強く勇敢な民族を大英帝国の輪に引き入れる結果となった、偉大で明白な勝利にそれが見いだされるであろう、と私は考えています。

 アイルランドの政治のようなものは世界中を探してもどこにもありません。それは国王にも国民にも責任を負わない政府であります。民主的な政府でもなく、独裁的な政府でもなく、寡頭政治的な政府でもありません。その機能が互いに重なり合い、時には対立する四十一の行政委員会に悩まされる政府なのであります。ある委員会は統合基金(*あらゆる公的歳入が流入し、あらゆるサービスを供給する基金)から、ある委員会は庶民院の議決によって、ある委員会はアイルランド開発助成金からの貯えから、それぞれ資金を供給されているのです。これらの委員会の中には、総督の下にあるもの、総務長官の下にあるもの、財務省の管理下にあるもの、全く何の管理下にもないものがあります。このようなシステムが作り出すものは全く筆舌に尽くしがたいほどにコストが高く、非効率で、使い勝手の悪い行政であります/横柄な役人と警察スタッフ/極貧の国民/この広大で豊かな島(*グレート・ブリテン島)の支出が増えるたびに自動的に上がる税金/年々悲劇的に減少していく人口。それに加えて、有能で組織化された王国忠誠派の排他的特権階級は、支援を地元民ではなく、海の向こうの外部勢力に求めるよう、何世代にもわたって教え込まれているのです。もし私たちに機転と勇気がなかったら、南アフリカに生じたであろうものとほとんど同じ状況が、現在アイルランドに存在しているのです。私が説明したこの状況をすべて、英国政治の舞台へ押し出して、対立党派の真ん中に置くならば、アイルランド政府のパノラマが完成します。

 ダンレーベン卿、ジョセフ・ウェストリッジウェイ卿、アントニー・マクドネル卿、ダドリー卿など、アイルランドで王室に仕えた人々を拠り所とする、こうした事実を前にして、自国に関わるあらゆる事柄において自らの運命を自由に操り、民族の持つ才能を自文化の目的に捧げることができる、もう一つのアイルランドというビジョンから目を背けないのは素晴らしいことでしょうか―グラッドストーン氏が、その長く輝かしいキャリアの集大成として留保していた、もう一つのアイルランドというビジョンであります。そこから目を背けないのは、素晴らしいことでしょうか。そうではありません(*目を背けないべきではない、すなわち目を背けるべきである)/私が申し上げたいのはアイルランドの皆さんが純粋な自分たちの地方の問題を管理できるような路線で、アイルランドとの国家的和解を実現したいという願いと目標は、自由党陣営の普遍的な歩みから切り離せるものではない、ということであります。私がここダンディーの壇上に立たせていただいているのは、私が自由と正義に基づいてアイルランドがイングランドと和解することを邪魔しようとはしていない、ということがはっきり理解されているからでありましょう。

 先ほどこれは重要な選挙だと申し上げました。そうです、良きにつけ悪しきにつけ、この選挙が陛下の政府と自由党に与える影響が広範囲に及ばないはずはありません。私たちに敵対する強力な勢力があります。イングランドの多くの選挙区で現在進行中であるトーリーの反動がますます強くなっていることを過小評価しないでください。今日ここにいる労働党の皆さんに、私は真剣に申し上げます―私たちと同じく、皆さんの頭上に集まっている嵐を過小評価しないでください。私は私たちの敵対勢力を恐れていません。皆さんの支援によって、私たちは彼らを圧倒し、皆さんの支援によって、彼らを打ち負かすことができるのです。ああ、しかしその支援が必要なのです。

 私が恐れるのは前方の敵ではなく、革新陣営の中であまりにも頻繁に顕在化する分裂であります―その分裂、力の分散、大きな緊急事態の瞬間の、問題が天秤にかけられる瞬間の内輪もめ―私たちの運動を弱め、本来なら手にしていたはずの成功を奪ってしまうかもしれないもの、それをこそ私は恐れているのであります。

 この選挙には逆向きの流れがあります。皆さんにはそのことに無頓着であって頂きたくありません。それは、あちらこちらへと流れ、前へ進むことを望む人々と私たちが振り払うことを望んだ―財政制度や行政と統治の方法、海外での主戦的外交政策など―過去の古くて野蛮な偏見や主張に戻ろうとする人々との間に、私たちがはっきりした争点を確立することを妨害しているのです。

 今宵はこのような潮流についてお話ししたいと思います/まず、社会主義について一言申し上げておきましょう。社会主義者の中には、私がその人物や考え方を尊敬する方々が沢山いらっしゃいます―その中には私がよく存じ上げており、交友関係を持っている方々もいます。世界の高貴で輝かしい未来について、楽しいバラ色の展望をお持ちのそうした紳士たちの多くは、日々の生活や日常の政治の現実からあまりにもかけ離れているため、彼らが目の前の出来事に有益で効果的な力を及ぼすことができるとは、私にはとても信じられないのです。ダンディーの自由党候補者である私は、夢想家であれ政治家であれ、革命的な社会主義者には訴えません。彼らが私に反対票を投じ、自由党に反対票を投じることは完全に正しい、と私は考えています、なぜなら自由主義は社会主義ではなく、決して同じにはならないからです。両者の間には大きな隔たりがあるのです。方法に隔たりがあるだけではなく、原理にも隔たりがあるのです。私たちには、彼らがどう呼ぼうとも、社会主義者という私たちの敵、あるいは味方と共に行かなければならない多くの道のりがあります/しかし私たちの意見と彼らの意見の間には、原理と政治哲学において巨大な違いがあります。

 自由主義には、それ自身の歴史と伝統があります。社会主義には、独自の手法と目標があります。社会主義は富裕層を引き下げようとし/自由主義は貧困層を引き上げようとします。社会主義は私的利益を破壊します/自由主義は私的利益を安全かつ正当に保護できる唯一の方法をとります、すなわち公権力と和解させるのです。社会主義は企業を殺し/自由主義は優遇措置と特恵関税の束縛から企業を解き放つでしょう。社会主義は個人の傑出を非難し/自由主義は大衆の生活の最低水準を作り、今後それをさらに引き上げるでしょう。社会主義は支配を賛美し/自由主義は人間を賛美します。社会主義は資本を攻撃し/自由主義は独占を攻撃するのです。

 私はこのように大きく区別しています、そしてこれが今回の選挙における私たちそれぞれの政策と気分の正しい区別であるということは皆さんにも同意して頂けると思います。自由主義はもう終わった信念であり/未来のない信条であると思わないでください。世界が回っている限り、自由主義は人々と国家との関係において―壮大で、有益で、改善的な―その役割を果たすことでしょう。

 困難な問題の常として、こうした問題の真実は両極端な処方箋の中程にあるのです。集団主義と個人主義というそれぞれの考え方をうまく調整するところに、これからの世界の問題とその解決策があるのであります。しかし、私自身は国や自治体にもっと集団的な要素を取り入れるべきと考える立場である、と申し上げることを躊躇いません。私は国が新しい機能を引き受け、新しい活動領域、特に独占的性格を持つサービスに踏み込んでいくことを期待しています。そこには国家事業のための広い領域があると思います。しかし私たちが個人主義を破壊し、それを絶対的に集団主義に置き換えようとする哲学を賛美し賞賛するよう命じられたなら、それは怪物的で愚かな概念であり、賢明な人々の頭脳と心―心は頭脳と同じくらい信頼に足るものです―に真に受け入れられことはできない、と私は申し上げます。

 さて、革命的社会主義者の皆さんは次の土曜日に好きなように投票していただければ良いので放って置くことにして、私たちの中心に位置する、労働党と労働組合という要素についてお話をしようと思います。そこでお許しいただけるなら、私はどちらかといえば率直な性格の言葉を一つ二つ申し上げたいとおもいます、そしてそれが広く伝えられ、真剣に研究され吟味されることを私は望んでいます。イギリスの労働党は社会主義ではありません。社会主義的要素が、むしろその意思に反して、労働党にその外観を強制していること、その活動のほとんどすべては労働組合が提供する資金によって支えられていることは、まったくの事実であります。しかし、労働組合は社会主義的なものではありません。労働組合は間違いなく個人主義的な組織であり、むしろ古いギルドの性格を持ち、巨大で滑らかで血の気のない均一性よりも、個人主義的精神の方向に大きく傾いているのであります。さて労働組合は労働界で最も重んじられるべき、最も強力な要素であります。私たちの産業システムの社会的防波堤であります。高度に競争的な組織が必要とするガードレールであります。そして私は陛下の政府の一員として、労働組合員の皆さんに対して絶大な自信を持って発言する権利があろうかと思います。なぜなら私たちは皆さんのためにこれまでのどの政権よりも沢山のことをしてきたからです。

 労働組合員の皆さんの立場はどのようなものでしょうか?皆さんは本当に信じているのでしょうか。私はこの質問をフェアに投げかけます―本当にトーリー政権と自由党政権の間には何の違いもないと信じているのでしょうか。労働組合員の皆さんは現在の自由党政権の崩壊を望んでいるのでしょうか?貴族院に激励のメッセージを送りたいのでしょうか―その結果として―自由主義的で急進的な法案や―現在議会に提出されている労働法案を拒否し、骨抜きにさせるために?貴族院に次のような励ましのメッセージを送るのでしょうか―「貴族院よ、学童への給食提供法案のスコットランドへの拡大を拒否したとき、スコットランドの土地評価法案を放り出したとき、スコットランドの小規模地主法案を放り出したとき、これらすべてを行ったときのあなた方は世論を正確に捉えていたのだ―これらすべての事をしたときあなた方は正しかったのだ。」そういうメッセージを貴族院に送りたいのでしょうか?まったくのところ、多数派である自由党の議席を減らすいかなる選挙結果も、意味するところはそれなのであります。

 さて皆さん、近頃の出来事一般に話を戻しましょう。政府は今何をしているのか、そしてこの短い期間に何をしてきたのか。その制限の範囲内で、また現在の貴族院の権威の下で政府は労働組合員の皆さんに対してこれまで何をしてきて、これから何をしようとしているのでしょうか。政府は労働争議法を可決しました。労働者災害補償法は、以前の法律では対象外だった六百万もの人々に補償の恩恵を拡大しました。治安判事(*Justices of the Peace)の資格―いわば市民の利害関係の評議権―は現世的財産を持たない人たちが市民法廷に座ることを容易にするため引き下げられました。イングランドの土地法案は、自分の利益のために農耕用の小区画の土地の取得を希望する、それに相応しい人物が、封建的な法律や古い法的手続き、階級的偏見によって、それを妨げられないようにするためのものであります。また免許制度法案(*酒類販売)には打撃を加える値打ちがあるのではないでしょうか、今すぐ、鉄が熱いうちに。さらに、鉱山労働者八時間労働法案があります。この法案は鉱山労働者の皆さんが二十年にわたって提唱し、人道的、衛生的な理由から最高の医学的証拠によって正しいとされてきたものです。この法案のために私たちは票を失い、支持者を失っているのです。庶民院を通過させたにもかかわらず、補欠選挙に負けてしまうのです。(*補欠選挙で労働党と票を奪い合って保守党に負けてしまう/その後も自由党は労働党に食われて党勢が衰え、当選できなくなってしまったチャーチルは1925年に保守党に復帰した)私たちには炭鉱労働者の皆さんと連帯している労働組合員の皆さんの支持を求める権利がないのでしょうか。そういう皆さんはこの法令が庶民院ではなく、貴族院のバランスに懸かっているとは感じないのでしょうか。貴族院は補欠選挙を重視し、六百万人の投票によって新たに選ばれた議会の多数派が法案を提出したとしても、彼らにはそれを骨抜きにしたり拒否したりする権利がある、と傲慢にも主張しているのであります。次に、老齢年金の問題があります。この問題は過去に大いに悪用され、誤って処理されたことがあります。

 この問題は1895年の選挙に勝つために私たちの反対党派が掲げた公約であります、そして十三年間の労苦とストレスを経て、自由党がこれを採択することが可能となり、効果的な方法で施行しようとしているのです。さて、これらのテーマの中で労働組合員の皆さんや責任ある労働党の指導者の支持を得られないものが一つでもあるでしょうか。政府はこれらの措置のために闘っています。政府はこれらや同様の目的のために、自らの生命と権力を賭けております。トーリー党はあらゆる点で反対しています。トーリー党の人気はこうした社会改革法案の通過で影響を受ける権益の抵抗によるものです。貴族院はトーリー党の武器であります。その武器を使って彼らは自由党政権を嘲笑うのです。労働党の指導者や労働組合員の皆さんは反動の脅威に直面している今、わざわざ貴族院と手を結ぶつもりなのでしょうか?私はそうは思いません。現政権の労働立法における実績は、わが国の労働者階級の大多数の支持に値するものであり、また支持を集めることができるであろうと私は信じています。

 しかし、私が真面目に申し上げたいのは、もし自由党政権が一方では散発的な補欠選挙で強化された貴族院に立ち向かい、他方ではそのために戦っている人々の一部から攻撃され、罵られ、軽蔑されるなら、どのような希望や活力や強さを持っていたとしても、その政権は弱体化し、おそらく屈服し、他の政権にとって代わられてしまうだろうということです。そして、どのような別の政権に取って代わられるのでしょうか。このような進歩的勢力の分裂がもたらす結果は、トーリーと保護主義の政権を樹立すること以外にはありえません。それは私たちにとって致命的なことではありません。自由主義が滅ぼされることはありません。自由主義は胎動する精神であって―不滅であります。それは良い時にも悪い時にも、すべての時代を生き続ける。いや!海を越えて輝く港の灯りのように穏やかな夜には柔らかな輝きを放ち、嵐のときには荒波の上で働く人々に生命のメッセージを投げかけるのであります。

 しかし、英国を統治するには大きな政党が必要です―この島に住む4千万人の人々を統治できるのは、徒党でも派閥でも陰謀でもありません。統治機構を作るためには、膨大な力の集中が必要なのです。皆さんは今、急進的で民主的な統治機構を手に入れましたが、もしこの政権が崩壊したなら、その機構は粉砕されてしまうでしょう。この政権は二十年の苦労と骨折りの末、勇気と忠実さによって再び樹立されたものであります。それは実現し―今ここにあります。それは今働いています、そして立法によって、また全世界に及ぼすことができる影響力を行使して、敵対者にさえも我々の言い回しで話をさせ、国内のすべての政党に社会改革を考えさせ、社会問題や内政問題に関わらせているのです。グラッドストーン氏がそう呼んだ―この偉大な機構を、この国の大衆がそれを必要としたときに、皆さんが傷つけ、あるいは弱体化させないように気をつけなければなりません。もし現政権が崩壊したらどうなるでしょうか。その墓碑銘にはこう書かれることでしょう:「社会改革に注意せよ。労働者階級は社会改革に携わる政権を支持しない。あらゆる社会改革は得票を減らしてしまう。社会改革に注意せよ。『非現実的な考え方を学ぶべし。』」

 スコットランド急進主義の本場であるダンディーで決定的ではない判断が下されたなら―決定的ではない、あるいはさらに悲惨な判断が下されたなら―私たちの島と姉妹島のあらゆる場所で、自由主義と進歩という本質的な力と真理のために働いているすべての人に絶望のメッセージを伝えることになるのです。下へ、下へ、下へと、社会改革者の高い希望は落ち込んでゆくことでしょう。多くの人々の脳裏に浮かんでいる建設的な計画は雲散霧消してしまうでしょう。古いレジームが復活し、再び導入されるでしょう。ブルボン家のように彼らは何も学んでおらず、何も忘れていないでしょう。私たちは束の間の大胆な希望の時代を立ち去って/頑固で偏見に満ちた否定の時代へと逆戻りすることになるでしょう。アイルランドには―断固たる十年の政権が/イングランドには―高価な食品と安価なジンが/そしてスコットランドには貴族院の優れた知恵がもたらされます!ダンディーの皆さん、それが皆さんのしたい仕事ですか?過去の多くの闘いの末に獲得した貴重な選挙権―すなわち票をそのような仕事に投じるつもりですか?いいえ/私は自らの自由意志で国政のまさに中心に飛び込んだこの都市が、今お話した/その命ずるところは後退ではなく前進であり/その勧めるところは臆病ではなく勇気であり/進歩的勢力を分裂させるのではなく結集させ、改革のエネルギーを分散させるのではなく結合することを目指す/チャンスを掴むことを確信しています。それは誰も誤解しようのない皆さんのはっきりしたメッセージとなって―鋭く、強い北国の空気がわが国を覆い、人々の心を奮い立たせ、弱者を励まし、強者をさらに強くし、寛大さを勧め、高慢を正すことになるでしょう。

 戦争中、戦闘が長く続き、戦線が凄まじい戦いに釘づけにされ、落伍者が押し寄せ、負傷者が流れ去り、予備軍があちこちで浮足立ち始めたとき、スコットランド連隊はしばしば栄誉に浴してきました/勇敢な旅団が砲煙の中、戦場の混乱の中、戦いのまさに真ん中へとまっすぐに進軍してきたのはこういうときなのであります。今この瞬間、皆さんがなすべきことは、これなのです。「スコットランドよ、永遠に!(*Scotland Forever!英国重騎兵連隊Royal Scots Greysの鬨の声)」

 さて私は議論を戦場の反対側、つまり私たちを攻撃している側の立場に移します/労働組合員の皆さんや労働者の皆さんはフェアな立場で現政権が行っている仕事を理解し、その辛い闘いを支援して下さるはずです/私は富裕層や権力者、(*アイルランド)統一派や保守派に目を向けます。彼らは自由貿易や節酒、その他の道徳的啓発の問題に関しては、自由党にかなりの共感を抱いています/こういう考えの皆さん、「私たちは自由貿易を好み、実際には自由主義だ。しかし、この政権はあまりに急進的で、その急進的な手段が気に入らないのだ/どうして放っておけないのだろう。」曰く「信用や貿易をかき乱し、商売の邪魔をし、国内に多くの階級闘争を引き起こすような法案を、すべて導入するのはどういうことなのだろう。」皆さんに私は申し上げたいのです。私たちがあれもこれも急進的すぎるとか、動きが早すぎるとか言う人たちに、私はこのように申し上げたいのです。「この政治状況を、党派の人間としてではなく、一人のイギリス人として見てください/歴史の光に照らし/哲学の光に照らし/心の広いキリスト教の慈愛の光に照らして見てください。」

 なぜイギリスでは世界のどの国よりも生命と財産が安全なのでしょうか。なぜ、わが国の信用はこんなにも高く、商業はこんなにも発達しているのでしょうか。それは私たちが課す抑圧的な法律のせいでしょうか?皆さん、わが国で施行されている、あるいは長年にわたってわが国で施行されてきた法律よりもはるかに厳しい法律が、現在ヨーロッパの大国で施行されていますが、そうした抑圧的な法律があっても生命と財産は完全に保障されてはおりません。生命と財産が安全なのは、貴族院のおかげなのでしょうか。わが国の貴族よりもはるかに強力で、はるかに均質で、より大きな特権を持ち、はるかに大きなエネルギーで活動していた貴族階級が、他の国々では一掃され、その存在の痕跡はまったく、あるいはほとんどなくなってしまっています。生命と財産が安全なのは、英国の国制(*constitution、憲法)のおかげでしょうか。英国の国制は主として英国の常識(*common sense)であります。四千万もの人口を擁しながら、これほど恣意的ではなく厳格ではない国制を持っていた国はありません。フランスの憲法、ドイツの憲法、米国の憲法ははるかに厳格なものであり、民衆運動に対してはるかによく武装されていますが、それと並行してこの島々の私たちはこの国制の下で、全体として他のどの国よりも優れた国家へと、何世紀にもわたって着実に前進してきたのであります。

 私は英国における生命と財産の安全の秘密が何であるかを、富と権力を握っている方々に申し上げたいと思います。その安全はそうした方々が嘆き、不満を漏らしている、まさにその階級闘争の継続から生じているのであります。それはわが国で絶え間なく続いている、絶え間ない摩擦を伴う階級と階級の闘いであり、決して無気力に陥ることも、暴力に陥ることもなく、年々着実に、絶え間ない前進を可能にしているものなのであります。生命と財産の安全は基本的にイギリスにおけるその階級闘争の性質に依存しているのです。私たちは常に変化しています/自然のように、私たちは非常にゆっくりとですが、大きく変化します。私たちは、変化のたびに常に高いレベルに到達していますが、それでも私たちの生活の調和は壊されず損なわれていません。そして、ここにいらっしゃる皆さんにも申し上げます、今このことを訴えたいと思います:わが国では裕福な人たち、権威ある指導的な人たちが皆一方の立場だけに立っていたことは決してありません。権力や地位を持ちながら、民意のために犠牲を払い、力を尽くしてきた人々が常にいたのです:だからこそ、私たちの周囲に見られるあらゆる浅ましさや悲惨さにもかかわらず、わが国には階級闘争が非常に少ないのです。そこに皆さん、民主主義の真の進化があるのです。こうして私たちは他の多くの国々が永久に失ってしまった、歴史の連続性という金の糸を守ってきたのです。これこそが皆さんが知っている、そして愛しているこの島の生活を、そのすべての魅力とすべての自由において維持し―私たちがこの世でなすべきことを終えた後にこの場所にいる人たちのために高め、発展させ、輝かせることのできる唯一つの方法なのです。

 そして、この街の産業と学問のリーダーの皆さんに、油断なく大衆の福祉を追い求め、その不利益によって利益を得ることを断固拒否する政策の側に立つよう私はお願いしたいのです/過激派の暴力にもかかわらず、厳しい状況が生み出す厳しい論争にもかかわらず、そうした紳士の皆さんには恩知らずとも思われる多くの力にもかかわらず、社会の進歩と前進の聖戦を―それは聖戦なのですから―追求し、我慢強くやり遂げるようお願いしたいのであります。

ケルン大聖堂の建設には600年の歳月を要しました。その間に何世代もの建築家たちや建設者たちが生き、死にました。それでも工事は続けられました。ある世代が間違った建築をし、次の世代は建築を中止せざるを得なくなり、また次の世代が建築をしなければならないこともありました。それでも作業は何世紀にもわたって続けられ、ついに人類の賞賛を集め、畏敬の念を抱かせる、美と真実の巨大な記念碑が世界に姿を現すに至ったのであります。イギリス連邦もそのようでありましょう。賢明に建設し、確実に建設し、誠実に建設し、一時しのぎではなく、未来のために建設しましょう。天国にあって欲しいと願うものを地上に打ち建てましょう―たくさんの大邸宅を持った一つの家族、そこには全員分の部屋があるのです。

 

発表された選挙の結果は以下の通り。
チャーチル(自由党)      7,079
バクスター(保守党)      4,370
スチュアート(社会党)     4,014
スクリムジール(禁酒主義者)    655
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自由党候補が勝ち越した得票差  2,709
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2022.3.29