「マラカンド野戦軍の物語」のエピグラフ



「マラカンド野戦軍の物語」のエピグラフ




 「マラカンド野戦軍の物語」にはタイトルページ、序文、本文の十二章にエピグラフが付けられています。それぞれについて出典を調べました。

 


タイトルページ

 「それ(辺境戦争)は文明の波の先端と前進を示すところの泡にすぎない。」

 ソールズベリー卿(*1830年生、英国首相)1892年、ロンドン市庁舎

 原文は発見できませんでした。


序文

 「世界の公明正大さに従い、私に観客を与えよ。」

          「ジョン王」 第五幕・第2場

 シェイクスピアの戯曲です。原文では使者がaudience、すなわち謁見を求める場面ですが、ここでは話者が聴衆を求めているという意味に訳しました。
https://www.gutenberg.org/cache/epub/100/pg100-images.html#sceneV_16.2


第一章

 ギルザイの首長は返書した:「私たちの道は狭く、険しいものです。
 太陽が谷を激しく焦がし、深い谷を雪解け水が流れています/
 ・・・・・・・・・・・
 したがって、よそ者には安心できる護衛と、勇敢な友人の誓いが欠かせません。」

         「アミール(*イスラム圏の首長)の伝言」A.ライアル卿


全文の訳文と出典


第二章

 私はたまたまウィア・サクラを歩いていた。―ホラティウス

 「厚かましい男」鈴木一郎訳
 国会図書館のサイトで読めます。(ログインが必要です)

https://dl.ndl.go.jp/pid/1335671/1/86


第三章

  宗教にはこれほど多くの悪事をそそのかす力があった。

                  ルクレティウス

 「事物の本性について―宇宙論」藤沢令夫、岩田義一訳
 国会図書館のサイトで読めます。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1342762/1/151


第四章

   「ハボック」を叫び、戦争の犬を解き放つ。

          「ジュリアス・シーザー」 第三幕・第1場


 シェイクスピアの戯曲です。アントニウスがカエサルの亡霊を恐れる場面です。
https://www.gutenberg.org/cache/epub/100/pg100-images.html#sceneIII_171


第五章

 …力の塔よ
  風の中に堅固に立っていた塔よ。

       テニスン

 

「ウェリントン公の死に寄せる頌歌」
 全文の訳と出典


第十一章

 兵士に起床を促し、夜明け前に武装することを命じる、兵舎のラッパのように、
 その音が朝の冷たい空気の中に、いかに鳴り響くことだろう。

 灼熱の太陽が汝らの真上に来た時、その信念と足元よ、堅固であれ、
 ライフル銃が戦列に並び、澄んだ音色で突撃ラッパが吹き鳴らされるそのとき。

                「下ベンガルでの説教」A.ライアル卿

 全文の訳と出典


第十二章

  「二千ポンドの教育が
  十ルピーのジェザイル(*アフガンの手作りマスケット銃)に倒れる。
  ・・・・・
  構ってくる奴を強く殴れ。撃てる奴をまっすぐ撃て。
  オッズは安い男についている。」

                   ラッドヤード・キップリング

 

「辺境の算数」からの引用です。
 全文の訳と出典


第十三章

   「バジャウルの荒々しい山男たちが自らの血で窒息して横たわり、
    そして、異教徒が足場を固めていたとき…」

               「下ベンガルでの説教」A.ライアル卿

 

 前出全文の訳と出典


第十四章

   「私は再び、私たちが遊んだ丘、泳いだ小川、
            喧嘩した野原を訪れる。」

                「遠く離れてハローを想う」バイロン

 

 全文の訳と出典


第十六章

   「彼らの目は落ちくぼみ、疲れ果てていた、
     その目は無気力な悲哀とともに
    荒れ果てた鷲の巣から
      眼下の平原を眺めていた。
   「二人はサーベルで、
     そして一人はエンフィールド銃で傷を負っていた。」

  「ラージプート(*ラジャスタンのクシャトリア)の反逆者」A・ライアル

 

 全文の訳と出典


第十七章

   「・・・そして、あなたは語られました
   出撃と撤退について、塹壕、テントについて、
   矢来、最前線、胸壁について、
   真鍮銃について、カノン砲、カルバリン砲について。」

            「ヘンリー四世」 第一部・第二幕・第3場


 シェイクスピアの戯曲です。貴族の妻が、家庭を顧みず、寝言でも軍事の事ばかり言っている夫に不平を言う場面です。
https://www.gutenberg.org/cache/epub/100/pg100-images.html#sceneII_9.3


第十八章

   「私は若いころ、しばしば博士と聖人の元に熱心に通い、
   あれについて、そしてこれについて
   大いなる議論を聞いたものだ/
   しかし、いつも入ったときと同じドアから出てきた。」

                    ウマル・ハイヤーム


 ルバイヤートの一編です。
https://www.gutenberg.org/cache/epub/246/pg246-images.html
 以下のような和訳も国会図書館のサイトで読めます。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1131717/1/27

 エピグラムではありませんが、八章にもう一編、ルバイヤートからの引用があります。

     ある者はこの世の喜びを
     ある者は預言者の楽園が来るのを恋い願う。
     ああ!現金を受け取り、債券を手放せ。
     遠い太鼓の響きなど気にするな。

                     ウマル・ハイヤーム

 同じく国会図書館のサイトで和訳を読めます。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1131717/1/18



2023.11.7