辺境の算数

 

 

Arithmetic on the Frontier

Rudyard Kipling

 

 

辺境の算数

ラドヤード・キップリング




 

原文テキスト:
https://www.gutenberg.org/cache/epub/2334/pg2334-images.html#link2H_4_0040

 

 

七年も学ぶ、
それはすばらしく、輝かしいことだ
御曹司は敵と立ち会ったときに
推測されることを、あれもこれも知っている―
峠から撃ち下ろされる銃弾が口笛を吹く
「すべての肉は草である。」(*イザヤ書40章6節)

「邪悪な硝石」(*シェイクスピア、ヘンリー四世、第一部、第一幕、第三場)で出来た
すべての殺意に立ち向かう
頭脳と肉体を育てるために
毎年三百ポンドが支払われる。
その後は?ユサフザイ族に聞け、
すべての「学問」から何が生まれるかは。

国境の駐屯地の小競り合いで
暗い谷間を駈けているとき
二千ポンドの教育費が
十ルピーのジェザイル(*アフガニスタン製の銃)に倒れる。
詰め込み教師の自慢の生徒、騎兵戦隊の誇りが、
交尾中の兎のように撃たれてしまう!

ユークリッドの定理も。
教科書の公式も、
弾丸をコートから跳ね返すことはできず、
振り下ろされる曲剣を防ぐことはできない。
構ってくる奴を強く叩け―撃てる奴を真っすぐに撃て
オッズは安い男についている。

キャンプから盗まれた房つきの剣は
叙法や時制という言葉も知らない、
しかし、完璧な視力に恵まれて、
私たちの軍の仲間を左へ右へとちぎり取る、
クルム渓谷(*アフガニスタンへの進入路の一つ)のすべての悪党の学費を
全額負担する。

丘陵地帯には、地元民の大群がひしめいている。
膨大な時間と蒸気を費やして、
軍船が次々と私たちを運んでくる、
逃げるアフリディ族を殺すために。

「弓と槍による私たちの捕虜(*植民地の住民)」は安価である。
悲しいかな!私たちは高価なのに。

 

2023.11.7