Sir Launcelot and Queen Guinevere A Fragment ランスロット卿とギネヴィア王妃(部分)

 

Sir Launcelot and Queen Guinevere A Fragment
ランスロット卿とギネヴィア王妃(部分)

 

喜びと苦しみが相半ばする魂のような、
天からの涙と微笑みを携えて
日差しの中に雨を降らせながら
乙女のような「春」が再び野に降り立った。
  水晶のような霞が立ち込め、
いたる所で青空の島々が笑いかけて、
遥か遠い森の奥深くで人知れず、
そびえ立つニレの木々が
  芳しい大気を吸い込んで緑を蓄えていた。

時にムネアカヒワが歌い:
時にウタツグミが力強い口笛を吹き:
時にハイタカが輪を描けば
災いを恐れて、森は静まり返った:
  深く曲がりくねった黄色い川は
瀬音豊かに草の中を流れてゆき、
生命あふれる大地の上で、
うなだれていたマロニエの芽は、
  完璧な扇形に広がり始めた。

そして、一年がまだ少年だった頃、
ランスロット卿とギネヴィア王妃は
高く澄んだ歓声を上げながら
鹿の潜む茂みを馬で駆け抜けて行った。
  彼女は喜びあふれる「春」とひとつになっていた。
前に黄金の留め金のある
草色の絹のガウンを装い/
黄金の輪に束ねられた
  淡い緑の羽飾りをつけていた。

ある時は、からみ合ったツタの網の上に、
ある時は、さらさらと流れる小川の傍に、
スミレの混じる苔の上に
彼女のクリーム色のラバは足を踏み入れる:
  そして今や、震える不思議な歌声に応え
手綱をシャンシャンと鳴らして
微光揺らめく荒野を馬で跳ねまわる
妖精の女王よりも素早く、
  彼女は平原を滑ってゆく。

光と影の中を素早く駆け抜けるたび、
心地よい風が彼女に戯れ、
編まれた髪から一房の巻き毛を解き放った:
華奢な指先で手綱を操る
  彼女はあまりにも愛らしく、
男ならば誰しも、
その完璧な唇に一度キスするために
あらゆる至福と現世の富を投げ打って、
  心のすべてを使い果たしたことだろう。

 

 

2026.1.25
・騎士の時代には春に騎士と貴婦人が森に出かけるMayingという行事がありました。
・荒野を馬で跳ねまわる妖精の女王はバラッド“Thomas the Rhymer”をモチーフにしていると思われます。
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/englishidyls/launcelotguinevere.html

Sir Galahad ガラハッド卿

 

Sir Galahad ガラハッド卿

 

我が良き剣は敵の兜を断ち割り、
 我が強靭な槍は狙いを過たない、
我は十人力なり
 我が心の清きがゆえに。
耳をつん裂くラッパの音が響き渡り、
 鋼の剣は鋼に当たり砕け散る、
折れた槍の柄は空を飛び交い、
 馬と騎士はよろめく:
よろめいては、ガシャンと試合場に転がる、
 そして闘いの潮が引くとき、
香水と花々の夕立が、
 淑女たちの手から軽やかに降り注ぐ。

愛する騎士に注がれる淑女たちの眼差しが
 いかに甘美なことだろう!
彼女らを恥辱と隷属から救うため、
 私は力を尽くして戦おう:
だが、私の心は完全に天上に向いている
 納骨堂や聖堂で、私は膝を折る:
私は愛の接吻を知らず、
 乙女の手を握ったこともない。
より恵み深い光が私を照らし、
 より力強い法悦が心を動かし、震わせるからだ/
ゆえに私は信仰と祈りによって
 行いと意思における純潔を保つのだ。

疾風の中で三日月が沈み、、
 一筋の光が私の前を漂い、
暗い木立の間で森が輝き出すとき、
 賛美歌の声が聞こえてくる。
そのとき、私は秘めやかな聖堂に通りかかる/
 声はすれども人影はなく/
聖歌隊席は空いていて、扉は広く開き、
 ロウソクが美しく燃えている。
雪のような祭壇布は白く輝き
 銀器は清らかにきらめき、
澄み切った鈴の音が鳴り、振り香炉が揺れ、
 その中を厳かな聖歌が響き渡る。

時に寂しい山の湖で
 私は魔法の小舟を見出す/
私は飛び乗る:舵取りはいない:
 闇がすべてを包み込むまで、私は漂う。
優しき響き、恐るべき光!
 三人の天使が「聖杯」を運んでくる:
足を揃え、白い衣をまとい、
 眠っているような翼に乗って空を渡ってくる。
ああ、祝福された幻よ!キリストの血よ!
 闇の潮を滑り下る栄光が
星のように星々と混じり合うとき、
 我が魂は肉体の牢獄を打ち叩く。

我が良き馬に揺られて
 夢見る町々を通り過ぎるとき、
クリスマスの朝を告げる鶏は鳴き、
 通りは雪に静まり返っている。
嵐は屋根の鉛板を叩き、
 剣や鎧を打ち鳴らし、しぶきを散らす/
しかし闇の上には栄光が広がり、
 吹き付ける雹を黄金に染めている。
私は平野を去り、高みに登る/
 身を守る枝の茂みもない/
しかし鳴り響く嵐の中、祝福された姿は
 荒れた沼地や風の野原の上に浮かんでいる。

貞潔の騎士—私に与えられた
 この希望ゆえに、私は恐れを知らない/
私はここでしばしば私を包む
 天上の空気を吸うことを切望する。
私は絶えることのない喜びを、
 生ける光に包まれた清らかな空間を、
その香りを私の夢にまで漂わせる
 永遠の平和の清らかな百合を想う/
そして、天使の手に打たれ、
 触れられた私の、この現世の鎧と、
この重さと大きさと、この心と瞳は
 最も清らかな空気へと変ずる。

大空の雲は晴れ、
 山の壁から
オルガンの調べが響き渡って、
 高まり、震えて、消えてゆく。
すると木々は揺れ、茂みは頭を垂れ、
 翼は羽ばたき、澄んだ声が舞う:
「おお、正義と至誠の神の騎士よ!
 乗り進め!報いは近い。」
こうして私は宿屋と広間と農場を通り過ぎ/
 橋と瀬と、領地と柵を越えてゆく、
甲冑に身を固め、何があろうとも、私は馬を走らせる、
 「聖杯」を見出すその時までは。

 

 

2026.1.23
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/englishidyls/sirgalahad.html

‘Love thou thy land, with love far-brought’ 「あなたの国を愛せ、遙かなる古より引き継がれたる愛を以て」

 

‘Love thou thy land, with love far-brought’
「あなたの国を愛せ、遙かなる古より引き継がれたる愛を以て」

 

あなたの国を愛せ、物語に満ちた遙かなる
 古より引き継がれ、
 現在において用いられ、
思想の力によって未来へと注ぎ込まれる愛を以て/

真実の愛は、不動の軸を中心に回転する、
 決して卑俗な目的に屈しない愛、
 それはイングランドの気質、自由人、友人、
あなたの同胞、そして不滅の魂への愛である。

しかし、性急な時代の欲しいままにさせてはならない、
 荒ぶる心と弱き翼を持ち、
 いかなる詭弁家の罠にも容易に絡め取られる群衆に
未熟な妄想を与えてはならない。

権能の務めを弱者に委ねてはならない、
 また盲目ではなく、日の光を待っている者から
 一条の光を隠してはならない、
たとえ彼らが、不確かな光に包まれていようとも。

知識を風に乗せて世界を巡らせよ/
 だが、知識に先んじて、
 知識の先駆者たる「畏れ」を
人間の種が蒔かれ、心が育つあらゆる空に飛ばせ。

時代の潮流を見極めよ/
 偏見を、その木目に逆らって断ち切れ:
 されど穏やかな言葉は常に有益である:
あなたの同胞の弱さを思い量れ。

地位や役職、あるいは恩給のために働くな、
 名声を期待するな:
 それは後の世に育ってゆくものである:
標語を過信してはならない:

古い格言に固執せず/
 現代の流行語に支配されず/
 変化に対して速すぎず、遅すぎず、断固たれ:
然るべき時に、立法せよ/

それは「議論」の中から強い拘束力という
 「命」を持って生まれ落ち―
 万人の利益に資するために、
数多くの心にあらゆる角度から吟味されたものでなければならない。

「自然」もまた、寒暖、
 乾湿を使い分け、数多くの強靭化の力を用いて、
 長い工夫の末に
生物の個体の形を完成するのだから。

安逸の中に錆びつかないよう、
 変化が私たちの存在を制御するのは良いことだ。
 私たちは皆、静かな歩みとともに変化していく、
魂の根源を除いては。

ゆえに来るべき変化を、
 去りゆくものと自由に噛み合わせ、
 共感に動かされて滑らかにその役割を果たす、
国家の繋ぎ目として働かせよ。

言うは易く行うは難しだ/
 過去のすべての「時」が明らかにしている通り、
 「思想」が「現実」と結ばれるところには常に、
雷鳴轟く婚礼の夜明けがあるのだから。

今この時も、私たちは内なる葛藤とともに、
 暗闇で苦闘する胎動を聴いている―
 来たるべき年月の「精神」が、
「生」と混じり合おうと切望しているのを。

ゆっくりと養われた力が、
 苦難という学校での完成を待っている/
 かつての統治形態の亡霊や、
強大な国家群の新たなる尊厳―

それらは成長する時代の番人であるが、
 霧の中で茫漠として捉えがたい/
 その周りで海と空は、「力」という
巨大な装置に暗く閉ざされている。

新たなる秩序は適切に組み合わされた
 数多くの変化から形作られるだろう。
 段階的な変化を重んじよ。さもなくば
「不和」の魂が、巻き起こる風と競い合うことになる/

その風はあなたの偶像に捧げられた火を吹き消し、
 その灰をその頭に積み上げさせて、
 我々は父祖よりも賢明であると
しばしば豪語したことを恥じ入らせるだろう。

ああ、それでもなお、もし「自然」の不吉な星が、
 成熟した人々をも、若者のように駆り立てて、
 「真理」の逃げ去る跡を追わせ、
戦いという青銅の橋を渡らせるなら―

もし「新」と「旧」の悲劇的な不和が、
 武装した敵同士のように衝突し続け、
 「原理」は血の中に降り注ぐというのが
「時」の終わりまで真実なのであれば/

それでも心ある賢者は
 罪と恥の中でさえ希望を捨てることはない、
 剣の柄に手をかけながらも、
「平和」そのもののように、動乱の地を歩み/

「派閥」の犬どもが吠え立てようとも、
 言葉と行いによって同胞に仕え続けるだろう。
 知識が剣をもたらしたとしても、
知識こそが剣を取り去るのだと確信し―

両方の陣営から差し込む善の光を愛して、
 決して目を覆うことはなく/
 そして、もし恐るべき必要が生じたなら、
断固として、ただ一撃のもとに打つだろう。

私たちが先人たちが咲かせた花であるように、
 明日は今日を収穫するだろう/
 慎ましい日々を実りあるものにせよ、「停滞」の異母姉妹である
「拙速」を娶ってはならない。

 

 

2026.1.15
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/ladyshalott/lovethyland.html

Mariana マリアナ

 

Mariana マリアナ
「堀の屋敷のマリアナ」―『尺には尺を』より

 

花壇はことごとく
 黒々したぶ厚い苔に覆い尽くされていた:
梨の木を壁に繋ぐ結び目から
 錆びた釘は抜け落ちていた。
壊れた納屋は、物悲しく奇妙に見えた:
 掛け金がカチャリと上がることもなく/
 孤独な、堀に囲まれた屋敷の上で
古びた藁屋根はすり減って、草が生えていた。
 彼女はただ言うだけだった「私の暮らしはさびしい、
  あの方は来ない」彼女は言った/
 彼女は言った「私は疲れた、疲れ果ててしまった、
  もう死んでしまいたい!」

彼女の涙は夕暮れの露とともにこぼれ/
 露が乾かないうちに、またこぼれた/
彼女は麗しい天を仰ぎ見ることができなかった、
 朝にも、そして夕暮れ時にも。
コウモリが飛び交ったあと、
 最も深い闇が空を深く眠らせているとき、
 彼女は窓のカーテンを引いて、
暗い平野の向こうを眺めた。
 彼女はただ言うだけだった「夜はさびしい、
  あの方は来ない」彼女は言った/
 彼女は言った「私は疲れた、疲れ果ててしまった、
  もう死んでしまいたい!」

真夜中に、
 彼女は夜に鳴く鳥の声で目覚めた:
雄鶏は夜明けの一時間前に時をつくった:
 暗い沼地から牛の低い唸り声が聞こえた:
変化への望みはなく、
 眠りの中でさえ、彼女はひとり彷徨っているようだった、
 冷たい風は孤独な堀の屋敷にも
灰色の瞳の朝を呼び覚ました。
 彼女はただ言うだけだった「昼はさびしい
  あの方は来ない」彼女は言った/
 彼女は言った「私は疲れた、疲れ果ててしまった、
  もう死んでしまいたい!」

壁から石を投げれば届くところに
 黒ずんだ水を湛えた水門が眠っていた、
その上には丸く小さな沼の苔が
 群れをなして生い茂っていた。
そばでは一本のポプラが常に激しく揺れ、
 節くれだった樹皮が銀緑色に輝いていた:
 何里もの間、平らな荒れ野には他に木もなく、
それを取り囲むのは灰色ばかり。
 彼女はただ言うだけだった「私の暮らしはさびしい、
  あの方は来ない」彼女は言った/
 彼女は言った「私は疲れた、疲れ果ててしまった、
  もう死んでしまいたい!」

そして月が低いとき、
 そして風が金切り声を上げて吹き荒れるときにはいつも、
突風の影が白いカーテンの上を
 あちらこちらと舞った。
けれど月がうんと低くなって、
 荒れ狂う風がその檻の中に静まったとき、
 ポプラの影が彼女のベッドに、
その額の上に落ちた。
 彼女はただ言うだけだった「夜はさびしい、
  あの方は来ない」彼女は言った/
 彼女は言った「私は疲れた、疲れ果ててしまった、
  もう死んでしまいたい!」

一日中、夢うつつの家の中で
 扉は蝶番を軋ませた/
青い蝿は窓ガラスでぶんぶんと唸り/鼠は
 朽ちかけた腰板の裏で金切り声を上げ、
亀裂から辺りを覗いた。
 古い人影がドアの向こうに揺らめき、
 古い足音が上の階を踏み鳴らし、
古い声が外から彼女を呼んだ。
 彼女はただ言うだけだった「私の暮らしはさびしい、
  あの方は来ない」彼女は言った/
 彼女は言った。「私は疲れた、疲れ果ててしまった、
  もう死んでしまいたい!」

屋根の上の雀の声、
 ゆっくりと時を刻む時計の音、そして
誘いかける風にポプラがつれなくする音、
 すべてが彼女の感覚をかき乱した/けれど
彼女が何より忌み嫌ったのは、
 濃いホコリが舞う太陽光線が部屋を横切って、
西の休息所へと日が傾いていく、その時刻だった。
 そのとき、彼女は言った「私は本当にさびしい、
あの方は来ない」と彼女は言った/
 彼女は泣いた「私は疲れた、疲れ果ててしまった、
  ああ神様、もう死んでしまいたいのです!」

 

 

2026.1.13
・主人公は持参金を失ったため婚約を破棄されました。しかし最後には想い人と結婚することになります。
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/juvenilia/mariana.html

Mariana in the South 南国のマリアナ

 

Mariana in the South 南国のマリアナ

 

足元に黒い影をひとつ落とし、
 見渡す限りの平原で照り輝いているその家は
重苦しい熱気に鎧戸を固く閉じ、
 埃にまみれた蔓草の中で沈黙している。
右手にはうっすらと青い山の端、
 目の前には干上がった川床、
 遠い浜辺には広がるのは
まばゆい砂と輝く入り江の浅瀬。
  「アヴェ・マリア」と彼女は呻いた。
   「アヴェ・マリア」と夜も朝も、
  「ああ」と彼女は歌った。「たったひとり、
   忘れられて、空しく愛するなんて。」

悲しみの歌は深まり、
 最も深い茶色の流れるような巻き髪を
彼女は薔薇色の細い指先で
 額から胸元へと
ゆっくりと左右にかき分け、その間から、
 密やかな聖堂に灯る火のような、
 涙も出ないほどの悲しみの住処、
神々しくも憂いに満ちた瞳が現れた。
  そして「アヴェ・マリア」と彼女は呻いた。
   「聖母様、夜も朝も悲しいのです」
  そして「ああ」と彼女は歌った「たったひとり、
   忘れられて、空しく愛するなんて。」

やがて海の上で空が
 深紅から深いオレンジ色に変わるまで、
彼女は聖母の前に膝をつき、
 低く身を屈めて呟いていた/
「お母様、どうかお恵みを、
 私をこの重荷からお救い下さい。」
 すると水鏡の上に
彼女の完璧なまでに清らかな顔が映った。
  「これが、そうなのでしょうか、」と彼女は呻いた。
   「夜も朝も、あの人が褒めてくれた姿なのでしょうか?」
  「ああ」と彼女は言った。「でも、私はひとり目覚める、
   忘れられて眠り、空しく目覚めるのです。」

鳥は歌わず、羊は鳴かず、
 空を横切る雲ひとつない、
ただ、太陽は刻一刻と熱くなって、
 石だらけの乾いた大地と、湯気を立てる塩を焼きつける/
いまや正午、彼女はふたたび眠りに落ち、
 膝まで届く山の草に包まれて、
 吹き抜ける故郷のそよ風と、
谷間を流れる小川のせせらぎを聞いていた。
  眠りの中で、彼女は静かに呻いた。
   そして夜や朝と同じように、呟きながら
  思った「私の魂はひとりきり
   「忘れられて、空しくここを歩いているのだわ。」

夢を見ながら、それが夢であることは知っていた。
 彼がそこにいるように、いないように感じていた。
目が覚めた。小川のせせらぎは消え、
 外では絶え間ない眩しさに、
干からびた小さな柳が病んで縮み上がっていた。
 川床は埃っぽく白み/
 溶鉱炉のような激しい光が、
目が眩むほど壁に照り返していた。
  彼女は声を押し殺し、夜や朝よりも
   いっそう深いうめき声を上げた、
  「優しいお母様、ここでひとり
   忘れられて生き、空しく死にたくないのです。」

そして、彼女は立ち上がって、胸元から
 彼女の価値がまだ息をしている古い手紙を取り出した。
そこには「愛は、地上で最も愛らしいものに対して、
 真実でなければならない。」と書いてあった。
ひとつの幻が戸口を通り過ぎ、
 冷ややかに見つめて、言ったような気がした
 「だが今や、お前の美しさは流れ去っていく。
だから永遠にひとりでいるがいい。」
  「ああ、残酷な心よ」彼女はトーンを変えた。
   「そして残酷な愛よ、その終わりが嘲りだなんて、
  ひとり残されることが結末なのですか、
   忘れられて生き、空しく死ぬことが?」

けれど、日が暮れゆく時、
 時に幻が戸口を通り過ぎ、
彼女の瞳を覗き込んで言うことがあった、
 「しかし、お前はもはやひとりではなくなるだろう。」
そしてあまねく地上に炎を向けて、
 炎熱に炎熱が続いた一日は終わりを告げた、
 壁から伸びる一本の黒い影は
ゆっくりと円を描いて東に回った。
  「昼から夜へ」と彼女は呻いた、
   「昼から夜へ、夜から朝へ、
  そして私は昼も夜も、ひとり取り残されて
   忘れられて生き、空しく愛している。」

夕暮れに蝉が乾いた声で鳴き、
 海のような音が聞こえた/
彼女は鎧戸を跳ね退け、
 バルコニーにもたれた。
バラ色に輝く空間の中で
 大きな宵の明星が彼女の涙にきらめいた、
 そして音のない天球の色を深めながら、
夜が天空を次から次へと昇って行った。
そしてすすり泣きながら、彼女は呻いた、
 「朝の来ない夜がやってくれば、
私はもう、ひとりきりではなくなる、
 忘れられて生きることも、空しく愛することも。」

 

 

2026.1.12
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/ladyshalott/marianasouth.html

Margaret マーガレット

 

Margaret マーガレット

 

I.
 ああ、愛らしくも青白いマーガレット、
 ああ、類いまれなる青白いマーガレット、
何が君の瞳に、通り雨に差す月の光のような
涙の力を灯したのか?
愛しい人よ、誰が君に授けたのか、その憂いに沈む心と、
  青白い顔という、人間ならでは恵みを、
  タネツケバナの香りのように
甘美で今にも折れそうな君の憂鬱を?
西へと流れて行く曲がりくねった大河から、
夕映えに照らされた森から、
  外界のあらゆるものから、
まるで虹と太陽の間に立っているかのように
  君は涙に濡れる優美さを勝ち得た。
話しかける前の微笑み、
 透き通る頬のえくぼは、
 すべての心を包み込み、
音のない繊細な哀しみの
  静かな喜びで満たしていく、
  それは羊毛のような雲の夜を渡る月が
 自らの周りに広げる
柔らかな琥珀色の輪のようだ。

Ⅱ.
君は安らかに留まったまま、
  争いのざわめきを聞くのを好む、
  しかし人生の苦難の中へ足を踏み入れることはない。
君の魂は戦いの騒乱が生み出した
  凪いだ海のようだ。
君は宵の明星、
  いつだって闇と光の間に留まっている:
骨折りの一日の和らげられた
  残響が君に届いて、芳醇な光のきらめきが
  夜の縁にいる君の傍らを漂っていく。

Ⅲ.
マーガレットよ、それが何だというのだろう、
  獅子心王プラタジネットが牢獄の格子越しに
褪せてゆく星たちを見上げて
  いかなる歌を歌ったからと言って?
   この上ないマーガレットよ、誰が語れようか、
シャトレ広場で断頭台の斧が
  燃え盛る脳を真実の心から切り離す直前に
  彼が心から愛した彼女の、
   まさに目の前で抱いた最期の激しい想いを。

Ⅳ.
君が生まれた日、君の守護霊は
  妖精の盾を作って君に授けた。
君の哀しみ、哀しみの影だけが、
  本物の哀しみを遠ざけるのだ。
君はあのような孤独の中を歩むことはない、
  双子の姉妹アデリーンと比べたとき、
君は神々しさにおいて劣らず、
  その心の動きはずっと人間らしい
君の髪はより暗く、そして
  その瞳もいくらか濃い色を帯びている、
  あれほど透き通った青ではない、
  けれどその瞳は優美な
悲しい共感の露にいつも震えているのだ。

Ⅴ.
  ああ、愛らしくも青白いマーガレット、
  ああ、類いまれな青白いマーガレット、
頬にかかる巻き毛を束ねて:
降りて、降りてきて、私の話を聞いてくれ:
  日は今まさに沈もうとしている。
並木のアーチは高く影が濃い、
  露を含んだかすかな光が
   葉の多いブナの間で揺らめいている。
哀しみの宴から立ち上がってくれ、淑女よ、
  君は一日中、喜びと哀しみの間に座って、
   それぞれにささやきかけているのだから。
せめて、芝生の向こうを眺めてくれ、
 君の部屋の軒下から顔を出して
見下ろしてくれ、そしてジャスミンの葉越しに
 その青い瞳を、夜明けのように私に投げかけてくれ。

 

 

2026.1.12
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/juvenilia/margaret.html

 

To W.C. Macready 1851 W.C.マクリーディ殿 啓上 1851年

 

To W.C. Macready 1851 W.C.マクリーディ殿 啓上 1851年

 

(口語調)
お別れです、マクリーディ氏、私たちは今夜お別れします/
 惜しみない万雷の拍手は幾度となく、人々の心を打つために
 あなたの力が遺憾なく用いられたことを告げてきました。
私たちは声を揃えて、心からの感謝を捧げます。
お別れです、マクリーディ氏、今宵この夜に、私たちはお別れします、
 その誉れを胸に家路に就いて下さい/かつての名優ギャリックや
 威厳あるケンブルたち、芸術を通じてこの国を
より清いものにした、至高の先人たちの列にお並び下さい。
あなたあればこそ、私たちの演劇は死に絶えることなく、
 子供のような大人たちが群がる、空疎なパントマイムや金メッキの玩具に
 成り下がることを免れたのです。
 お別れです、道徳的で、厳かで、崇高なマクリーディ氏/
私たちのシェイクスピアの、穏やかな、遍く世を見渡す眼差しは、
 二百年の時を超えて、満足げにあなたに注がれていることでしょう。

 

(文語調)
さらば、マクリーディ、今宵、我ら別れゆく/
 惜しみない万雷の拍手は幾度となく、人々の胸を打つために
 貴殿の力が遺憾なく用いられたことを告げてきた。
我ら声を揃え、心より感謝を捧げる。
さらば、マクリーディ、今宵この夜に、我ら別れゆく、
 その誉れを胸に家路に就かれよ/古の名優ギャリックや
 威厳あるケンブルら、芸術を通じて国を
より清きものとした、至高の先人たちの列に並び賜え。
貴殿あればこそ、我らが演劇は死に絶えることなく、
 幼稚なる大人の群がる、空疎なる無言劇や鍍金の玩物に
 堕つるを免れたり。
 さらば、道徳的で、厳かで、崇高なるマクリーディ/
我らがシェイクスピアの、穏やかな、遍く世を見渡す眼差しは、
 二百年の時を超え、満ち足りて貴殿の上に注がれん。

 

 

*名優ウィリアム・チャールズ・マクリーディ(1793-1873)の引退記念晩餐会(1851年3月1日、ロンドン・タバーン)に寄せた一文です。
2025.1.6
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/locksleyhall/macready.html

Edward Gray エドワード・グレイ

 

Edward Gray エドワード・グレイ

 

あの道を通りかかった僕は
 あの街の、可愛いエマ・モーランド
に会った/
「あなた恋人いるの?」と彼女は言った/
 「エドワード・グレイ、あなた結婚してるの?」

可愛いエマ・モーランドは僕に話しかけた/
 僕はひどく泣いて顔を背けた。
「可愛いエマ・モーランド、エドワード・グレイの心は
 もう二度と恋なんかしないんだ。

「エレン・アデアは、僕を深く愛してくれた、
 両親の反対を押し切ってまでも/
今日、僕は風吹く丘の
 エレンの墓に座って一時間も泣いてたんだ。

「恥ずかしがりな彼女を、僕は冷たい女だと、
 高慢な女だと思って、海の向こうへと逃げ出したのだ/
僕は愚かさと悪意に満ちあふれていたのだ、
 エレン・アデアは、僕ゆえに死にかけていたのに。

残酷な、あまりに残酷な言葉を僕は投げつけた!
 それが今日、残酷にも自分に跳ね返ってきた。
『お前はあまりにも軽はずみで移り気だから』と僕は言った、
 『エドワード・グレイの心を動かすことなどできない』と。

「僕は墓の草に顔をうずめ、
 ささやいた。『僕の絶望を聞いてくれ/
自分のしたことすべてを悔いている/
 なんとか言ってくれ、エレン・アデア!』

「それから僕は鉛筆を取って、腹ばいになって
 苔むした墓石にこう書きつけた。
『ここに眠るはエレン・アデアの亡骸、
 そしてここに眠るはエドワード・グレイの心!』

「愛は来て、愛は去り、
 木から木へと鳥のように飛び移るものかもしれない/
だが、僕はもう二度と、二度と誰も愛さない、
 エレン・アデアが僕の元に帰ってくるまでは。

「僕は墓石の上でひどく泣いて/
 そしてひどく泣きながら、立ち去った。
あそこに眠るはエレン・アデアの亡骸!
 そしてあそこに眠るは、エドワード・グレイの心!」

 

 

2025.1.6
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/englishidyls/edwardgray.html

Supposed Confessions of a Second-rate Sensitive Mind 二流の敏感な心の告白とでも言うべきもの

 

Supposed Confessions of a Second-rate Sensitive Mind
二流の敏感な心の告白とでも言うべきもの

 

ああ、神よ!私の神よ!今こそ慈悲を垂れたまえ。
私は気を失って、崩れ落ちてしまいそうです。人は言います、
あなたは私のために、
私のような者のために苦難と死と軽蔑を
耐え忍んで、死んで下さったのであって、
私の罪は、あなたの茨の冠の
一本の棘になって、その魂を傷つけたのだと。—そして、
この無知の極みの苦しみの中にある
今でさえ、私は印を求めてしまうのです!もし今、
一人祈る私の傍らで、微睡んでいるかのような夏の正午を
一筋の火が切り裂いたなら、私の信仰は
もっと強くなるだろうに、などと考えてしまうのです!
私の傲慢は、完全に打ち砕かれたのではなかったでしょうか?
霊的な高ぶりも静まったのでなかったでしょうか?
自由意志に抱いていたかつての喜びは、
冷たく、死に絶えて、屍のようになったのではなかったでしょうか。
あなた以外の何が私に残されているでしょうか?
あなたとあなたへの信仰以外に
何があるというのでしょう?人々は私の横を通り過ぎていきます/
幸せそうな顔をしたキリスト者たち—
子供たちはみな、あなたに満たされているようです!
女性たちは、
天使たちが声高く人々に語り、
あなたと平和がこの世に産み落とされたあの幸福な朝、
あなたの上に身をかがめられた
お母上のような聖らかな微笑みを浮かべています。
善意は私に、そしてすべての人に等しく向けられていますー
私も彼らの一人であり/彼らは私の兄弟/
キリストにおける兄弟—日々続く
平和と信頼の世界/
万物の終わりまで確信と希望が続いて、
そして一つの天国が、私たち全員を受け入れて下さるのです。

信仰の共有が、どれほど甘美なことでしょうか!
死への軽蔑の共有が!
そして土が土に還る
埋葬のとき、
人間の心を傷つけ、蝕むような棺の綱のきしむ音を聞いて、
それを恐怖ではなく、希望に満ちた悲しみと
受け止めることができたなら、どれほど救われることでしょうか!

三倍も幸せなことでしょう、ふたたび
膝の上に抱かれて
薔薇色の指を母親の首筋に遊ばせる、
疑うことを知らず
母親の瞳の他に何も知らない、
幼子にもどれたなら!
その瞳は、夜も昼も彼を慰め/
その小さな命をいつも照らしているのです/
彼には、訪れようとする災いへの憂いもなく/
生や死への煩いもなく/
喜びが外に溢れ出すことさえ稀なのは、
幸福と、完璧な安らぎが、
あまりにも深く内側に満ちているからなのです、
幸福は、自らの神殿であり生誕の地である幼子の無垢な心を、
そこに噴き出す泉の底の源に
永遠に住まうことを願うほどに愛しています、
そして、地上をさまようことも、幼子の血に混じり合って
彼を至福で満たしている自らの繊細で温かな黄金の吐息を
その冷たさで白くしてしまう
うつろな空気を吸うことも嫌い、遠ざけるのです、
ああ、それは確かに、
神の特別なご配慮なのです、
疑念から守り、試練に耐える鎧を着せ、
三重の鎖帷子のような信頼と澄み渡った喜びで、
幼子の人生の曙を守ることは。

願わくば、私の陰鬱な空想が
母上、あなたのようなものであったなら、
あなたの膝に額をあずけ、手に手を包まれながら、
最も神聖な祈りによって、私のために立てられた誓願を
私は聞いていました—その価値のない私のために!—そして
信仰の美しさと安らぎを知る
あなたの穏やかで深い瞳と、
そこを通して輝きを放つ澄み切った魂を見上げていました。
ああ、なぜ私たちは、これほど深く張った
根から歪んで育ってしまうのでしょうか?なぜあえて
砂漠に踏み出すのでしょうか?あなたが跪いた
その場所に、私も身を屈めることが
できないのでしょうか—ここにある氷が溶け去って
あなたと同じように感じられるようになるまで?
母上、あなたが粘土の下深く眠っているとき、
どのような悪魔が、あなたが育てた花を傷つけ―
あなたの百合から露を払い落とす非情さを持っていたのでしょうか?
それは私なのでしょうか?そうなのでしょうか?私なのでしょうか?あなたへの
愛はそれほどまでに小さかったのでしょうか?しかし
なぜあなたの清らかな祈りは打ち勝たなかったのでしょうか?なぜ
聞き届けもせず、救える力がありながら
救おうとしないお方に祈られるのでしょうか?あなたは信仰に篤く、
境遇の悲しみにも強かったにもかかわらず聞き届られませんでした。もし
あなたが今でも嘆願を続け、私が帆をいっぱいに張った小舟に乗って
真っ暗闇を、轟く旋風が吹き荒れ、こだまする中を、
導き手もなく、死の瀬戸際まで傾きながら、
沈みはせずに漂っているのを見られたなら!私には
わかっています。もしあなたが存命なら、
日々の深い祈りの中で、
朝な、夕な、
私をあなたの神と和解させようと
努めて下さったであろうことを。
たとえ私の希望が灰色で、心が冷え切っていたとしても、
なおもあなたはつぶやかれるでしょう―
「この羊をあなたの囲いに連れ戻したまえ、
主よ、もし御心ならば。」
あなたは私に仰るでしょう、鞭の罰と
傲慢への懲らしめに耐えねばならないと/
悪魔の罪であるその傲慢こそが、私と
神の光との間に立ちはだかっているのだと/
これまで私は神を侮り
拒んできたのだと—もし私が祈るなら、
神の溢れる愛から、
み恵みがマナのように私の荒れ野に
滴り落ちるだろうと―神が動かれ、
そして、その硬い、硬い岩を打たれたなら、そこから
この上なく苦いながらも甘い、
悔悟の涙が流れ出して、
それが希望の命を青々と保つだろうと。ああ!
悲しいかな、今の私には傲慢が住み着くどころか
留まる余地さえありません。私はうつろで、暗く、形がなく、
完膚なきまでに叩きのめされているのです。

ならば、なぜ信じないのでしょうか?
なぜ人が繋がれ、安らいできたその場所に
己の弱さを繋ぎ止めることができないのでしょうか?ならば
嵐に刻まれ、侵食されたあとの広い砂浜に
パリパリと波の斜面が打ち寄せる
夜半の海に問うてみれば良いでしょう、なぜ
氷河湖のように微睡まないのかと?
なぜその波頭は、地中の湖の
さざ波やうねりとは違うのかと?なぜ
海はそのように呻いているばかりで、
湖に色を与え、それを覆いつくしている青い空を、
自らの苛立つ水に映すことが叶わないのかと?私はあまりに孤独で、
あまりに震えています。自らの弱さは
私の判断を狂わせ、疑念と恐怖は足元を揺るがして
私の精神を混乱させています。

「それでも」と青春の朝の、
まだ日に灼けておらず、新鮮な力に満ち溢れ、
真理を求めて歩き出した、あの頃の私は言ったものでした、
「もし、疑いの中から真実がようやく
不変のものとして浮かび上がり、
燃え盛る火と
荒れ狂う風の中から、
輝く額と完璧な手足を持った
この卓越と
不変の美の確かな形が
ついに立ち現れるのならば、
疑うことこそが、人間の特権なのだ。なぜなら去勢牛は
苦役で蹄がうっ血しない限り、
恐れることなく穏やかに、
ただ草を食み、眠り、暑い夏に
尖峰の谷間や、
木々に縁取られた丘の窪みを
穏やかな鳴き声で満たしている。群れの中の
小羊は、その年を喜び、
仲間と自由に駆け回って、
花咲く畝から母の呼ぶ声に応える。やがて、
思いも寄らず短い痛みが
その温かな心臓を貫く/すると、その視界は
どこからともなく暗くなる/跳ね回り、
登り慣れた故郷の斜面が、
曇って光を失った瞳から遠ざかり、
暗闇の中の何者かが
その額を地面に引き倒し、
そして子羊は死ぬ。
人もまた、生きている間は
生き続けること以外、夢想だにしない若い小羊のような、
喜びと希望の中に生きるべきなのだろう?
私たちは生と死や、
目に見えるものと、目に見えないものの理を見つめ、
私たちの二重の性質を解き明かし、
あらゆる信条を比較して、
もしそんなものがあるとするなら、
唯一つの真理を見つけ出すべきではないのだろうか?」しかし、ああ!
悲しいことに、誰もが疑いを持てるわけではありません、いたるところで
誰かが偶像にしがみつかねばならないのです。しかし、私の神よ、
私は何を偶像と呼んでいるのでしょうか?あなたの鳩の影で
私を覆いたまえ。私の罪を忘れ去り、
あなたの愛で私を照らしたまえ。ああ、教えたまえ、
あの重しい土くれが私の上にのしかかって、地の底の濃い暗闇で
あの鋭い口を持つ虫たちの貪食が始まる前に。

ああ、倦み疲れた生よ!ああ、倦み疲れた死よ!
ああ、荒れ果てた精神と心よ!
ああ、呪わしい、この揺れ動く境遇よ!

 

 

2025.12.31
・この詩はテニスンが21歳のときに書かれたものです。本人の母は存命でした。従って死んだ母への語りかけはフィクションです。
・当時の子羊の屠殺法は頸動脈の切断でした。
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/juvenilia/supposedconfessions.html

| カテゴリー : テニスン | 投稿者 : 上田エリヤ

Eleänore エレアノーラ

 

Eleänore エレアノーラ

 

I.
あなたの黒い瞳が開かれ、
初めて見上げたのはイングランドの空ではなかった、
   外から内へと取り込まれて
幼いあなたの心を形作ったものは
ここには何もない。
人里を離れた
ヒマラヤスギの森の一マイル下で
夏の朝、あなたは生まれた。
あなたの豊かな額をなでたのは、
 私たちのオークの間を吹くそよ風ではなかった、
光あふれ、影の漂う、
 麗しい土地にあなたは育ったのだ。
東方の妖精は
  あなたが生まれたとき、
   幼いあなたを喜ばせようと
霊気漂う小川の古い水源や、
紫の山々の奥深く、
  そして陽の当たる海岸の影のある入り江から、
   宝石や貝殻、星のように輝く鉱石といった、
   この世の選りすぐりの富を携えて、
  あなたの揺りかごを飾ったのだ、エレアノーラよ。

Ⅱ.
あるいは、黄色い縞模様の蜂たちが、
香り高いそよ風に乗って
  半開きの格子窓から忍び込み、
   独りで寝ている幼子のあなたに、
  妖精の庭で集めた純白の蜜を与えたのだ―
  絹のように柔らかなひだに包まれて、
  沈み込むような羽毛の上で、一人夢見る輝かしい幼子は、
群がる蜂の羽音に包まれて、
  夢の多い眠りに誘われたのだ。

Ⅲ.
誰があなたに仕えるだろうか。
夏は自ら、黄金の盆に
  黄金の皮をまとった
  果実を載せてあなたに仕えるだろう、あるいは初秋は、
光を通さないほどにブドウの葉が茂り、
香り高い蔓草に咲く、幾多の深い色合いのつり鐘形の
   花々に目が眩むような木陰で、
大気がすべての
  空の上で眠り、
  翳りゆくすべての岸で
  岩山が夕日を浴びて
湖を真紅に染め上げる頃、あなたに仕えるだろう、
      エレアノーラよ!

Ⅳ.
どのような満帆の詩句で言い表し、
  どのような韻律で讃えられるだろうか、
   あなたの白鳥のような気品の
豊かに流れるハーモニーを、
      エレアノーラよ?
   あなたに漂う優雅さの
華麗なシンメトリーを、
      エレアノーラよ?
   あなたの身のこなしと眼差しのすべてを、
   その神々しい顔立ちのすべてを、
      エレアノーラよ、
   そしてあなたの上に留まり続ける、
   沈まない夕陽のような輝きを?あなたの中には、
   唐突なもの、欠片のようなものは何一つない/
 一つの聖所の一つの香炉から放たれる、
   二筋の自由な煙のように、
   想いと動きは混じり合って、
 永遠に溶け合う。動きは
 お互いの中に流れ込んで、あたかも、
 あなたの周りに息づく
   音のない旋律と、
 お互いから絶えることなく
  深くまろやかに引き出される
豊かな休符に合わせて転調しているようだ/
 誰があなたを言い表せるだろうか、エレアノーラよ?

Ⅴ.
私はあなたの前に立って、エレアノーラよ/
   あなたの美が、日に日に、刻一刻と、
次第に花開いていくのを見つめる。
あなたの深く神々しい微笑みが
   黄金の雲の中から現れるかのように
ゆっくりと溢れ出すとき、私はうっとりと物想いに耽る。
あなたの深い愛を宿した瞳の倦怠が
   私のところに漂ってくるとき、いつも
私はうっとりと物想いに耽る。このまま
   陶酔の中に、歓喜の中に囚われて、
離れた場所から永遠にあなたを見つめ続け、
崇めていたいと私は願う、
静穏にして、荘厳なエレアノーラよ!

Ⅵ.
時折、強く目を凝らして見つめるとき、
あなたの大きな瞳の中で
幾重にも折り重ねられた想いが、微笑みながら眠り、
ゆっくりと目覚めては、豊かに満ち、
深まっていくのが見えるような気がする、その光の前で、
私は目を逸らすことも、伏せることもできず、
ただ無に等しい存在になる。
それはまるで、至高の天に座する星が、
見ている間に、ゆっくりとその球体を回転させ、
輝きに満ちてゆき、太陽のように動かなくなったかと思うと―また
  ゆっくりと褪せて、元の姿に戻っていくかのようだ。
   想いはそれほどまでに豊かに満ち、深く、緩やかに、
   あなたの大きな瞳の中で行き交うのだ、
  荘厳なエレアノーラよ。

Ⅶ.
高みに留まり、世界を
  疑念と恐怖で覆っていた雷雲が、
夕暮れの大気を漂ううちに、
空一面の黄金色に変わっていくように/
あなたの前では、あらゆる情熱は
その精神の芳醇に触れることによって
静かな瞑想の中で
  炎と荒ぶる力を失い、
穏やかな喜びと、
  静観という贅沢に陥って熱を失ってしまう。
それは波が、静かな入り江に打ち寄せて
  滑るように進み、やがて静かに立ち止まって
   岸辺の景色をありのままに映すかのよう。
あるいは時に膨れ上がって、
 外海のうねりそのままに
 陸地に押し寄せるかのようだ。
  まさにそれと同じ力が、
  あなたを見つめる情熱の
 魂と感覚のすべてを支配する。
弓の弦を緩めた、物憂げなエロースは
 頬杖をつき、翼を垂れて、
 あなたを見つめている、
  そして、そのまま微睡んでいたいと願っている、
  静穏にして、荘厳なエレアノーラよ。

Ⅷ.
しかし、愛を囁く香り高い風がそよ吹く
日の入りと月の出の間に、
 あなたが髪をほどいて彷徨うとき/
  あるいは、薄暗い広間で、
絹のクッションに半ば身を預けるとき/
   私はその優美さに目を奪われ/その顔に
  心を奪われ、
   動けなくなって魔法の眠りに落ちる/
  そして血管を伝って全身に
   気だるい炎が
 とろけるように、ゆっくりと広がってゆく。やがて
   その薔薇色の唇から私の名が
 流れ出す、その時、激しい
  耳鳴りがして、
   舌は震えてもつれ、
  顔面蒼白になり、息は止まって、
  私は気を失いそうになり、熱い命の
狂おしい滴の溢れそうな、贅沢な死の杯を飲み干す。
   あなたから聞きたい言葉を聞く前に、私は
    その歓喜に死んでしまう/
    しかし、もう一度私の名前を呼んでほしい、
 私は永遠に死に続けたい、
 そのように死に続けたいのだ、エレアノーラよ。

 

 

2025.12.26
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/juvenilia/eleanore.html

| カテゴリー : テニスン | 投稿者 : 上田エリヤ