The Lady of Shalott シャロットの女

 

The Lady of Shalott シャロットの女

 

第一部
河のほとりに長々と
麦ライ麦は広がって、
丘を覆えり、空までも/
道は走れり、その中を
  目指すは多塔のキャメロット/
そこを行きかう人々の
見下ろす先にスイレンの
島を巡りて咲き誇る、その島こそは
  シャロット。

柳は白み、ポプラ揺れ、
静かな風は影落とし、
水面にさざ波立ててゆく、
島の周りにとこしえに、
  流れの先はキャメロット。
四面の壁と、四本の塔、
灰色に花を見下ろせり、
静かな島に隠されて、女の住まう
  シャロット。

岸の柳に隠れつつ、
重たい荷船はゆっくりと
馬に引かれて進み行き/
絹の帆の舟軽やかに
  滑れる先はキャメロット。
窓辺に立つも手を振るも、
誰にも見られしためしなし、
誰も知らないあやかしの女の住まう
  シャロット。

ただ、早くから芒(のぎ)のある
麦を刈る者たちだけの
聞く快いその歌の、
もとのうねった清流の
  行方は多塔のキャメロット。
疲れ果てたる月の下、
麦束高く積み上げて、
聞いて囁く「あやかしの女の声よ、
  シャロット。」

第二部
女のそこで夜も昼も
織るは魔法の極彩色。
囁く声の聞こえ来る、
手を止め城を見下ろせば
  呪いは落ちる、その上に。
いかなる呪いやいざ知らず、
ただひたすらに織るばかり、
他にはなにも想わずに、ただひたすらの
  シャロット。

壁にかかった曇りなき
鏡を年中休みなく
影は動いて過ぎてゆく。
近くにうねる街道の、
  行き着く先はキャメロット。
水面の淀みは渦巻いて
むっつりとした村男、
赤いマントの市娘、通り過ぎ行く
  シャロット。

時に陽気な乙女らや、
緩歩の馬の僧院長、
時に巻き毛の羊飼い、
長髪真紅の小姓らの、
  目指すは多塔のキャメロット。
青い鏡を折々に
騎士は二騎ずつ駆けてゆく:
決して違えぬ忠節の騎士を持たない
  シャロット。

鏡に映る魔法の影
織り上げることは楽しくて、
静かな夜に羽飾り、
灯火と音楽、葬列の
  向かってゆくはキャメロット:
月の真上にある頃に、
若い新婚浮かれ出て/
「もう見たくない、影なんて」言った女は
  シャロット。

第三部
弓を射たなら届く距離、
麦束縫って駆けてきた、
まぶしい木漏れ日降り注ぎ、
真鍮の脛当て照らすのは、
  勇猛の騎士、ランスロット。
黄金の野原に輝きし、
盾には永遠に赤十字の
騎士の平伏す乙女あり、傍には寂しき
  シャロット。

手綱に散らばる宝石は、
さながら黄金の天の川
懸かる星の枝さながらに。
手綱の鈴を響かせて
  向かってゆくはキャメロット:
紋ある肩帯下げるのは
巨大な銀の角笛ぞ、
駆ければ鎧は鳴り響く、傍には寂しき
  シャロット。

雲ひとつない空の下、
鞍の宝石輝いて、
兜と上なる羽飾り、
炎一つと燃え上がり、
  駆け行く先はキャメロット。
紫色の闇の中、
光り輝く星団の
下に尾を引く彗星の、傍に静まる
  シャロット。

広い額は日に光り/
輝く蹄響かせて/
兜の下の漆黒の
巻き毛を高くなびかせて、
  駆け行く先はキャメロット。
堤の上から、川面から
鏡の中に閃いて
「ティラ・リラ」と歌いしは、河のほとりの
  ランスロット。

織物を捨て、織り機捨て、
三歩進んだ部屋の中、
見しはスイレン花盛り、
見しは兜と羽飾り、
  ついに見下ろすキャメロット。
織物虚空に漂って/
鏡は割れぬ、真っ二つ。
「呪いはこの身に落ちて来た」叫んだ女は
  シャロット。

第四部
激しい東風吹き荒れて、
淡い黄色の森は褪せ、
広い川面は岸を打ち、
低い空から猛烈な雨降る
  多塔のキャメロット/
女は階下に降り立って、
柳の下に一艘の
小舟見つけて
その舳先、書いた名前は
  「シャロット。」

川面の広い暗がりへ、
哀しい運命見通した、
呆然自失の予言者の、
ガラスの顔を振り向けて、
  見つめる先はキャメロット。
日暮れに鎖を解いた後、
女は舟に横たわる/
広い川面が遠くへと、運んだ女は
  シャロット。

左へ右へゆったりと
たなびく雪の衣着て/
木の葉を軽く身に受けて/
ざわめく夜を通り過ぎ、
  流れてゆくはキャメロット:
柳の丘や畑の間を
縫って舳先のゆくときに、
最期の歌の聞こえしが、歌う女は
  シャロット。

哀しく聖く、祝歌、
高く、また低く、朗々と、
血はゆっくりと凍りつき、
目はぼんやりとかすみゆき、
  向かうは多塔のキャメロット。
流れに乗って岸に立つ
最初の家に着く前に、
最期の歌を歌いつつ、死んだ女は
  シャロット。

塔や露台のその下を
庭や回廊の傍らを、
輝く影と流れゆき、
高い家々通り過ぎ、
  入った先はキャメロット。
桟橋に人は押し寄せる、
騎士も、町人、貴婦人も。
舳先にあったその名前、読んだ名前は
  「シャロット。」

何が起きたか?誰なのか?
傍の明るい宮殿の
楽しい宴は静まった/
騎士たちは皆慄いて
  十字を切ったキャメロット:
ランスロットは沈思した/
言った「彼女は愛らしい/
神よ、恵みを垂れたまえ、この美しき
  シャロットに。」

 

 

2026.2.22
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/ladyshalott/ladyshalott.html

| カテゴリー : テニスン | 投稿者 : 上田エリヤ

The Sisters 姉妹

 

The Sisters 姉妹

 

私たちは同じ血を引く、二人の娘だった。
あの子の顔立ちはこの上なく美しかった。
  小塔と木々の間に風が吹いている。
二人は睦み合った、そしてあの子は身を滅ぼした/
そして、復讐こそが私の生きがいになった。
  ああ、その伯爵の、なんと美しかったことでしょう!

あの子は死んだ/燃え盛る業火に堕ちた/
誉れ高い古い血筋を、恥辱に汚して。
  小塔と木々の間で風が吠えている。
何週間も、何ヶ月も、朝から晩まで、
彼の愛を勝ち取るため、私は待ち伏せをした。
  ああ、その伯爵の、なんと美しかったことでしょう!

私は祝宴を催し/彼を招き寄せた/
その心を射止め、我が家に連れ帰った。
  小塔と木々の間で風が唸っている。
晩餐のあと、寝台の上で、
彼は私の膝に、その頭を横たえた。
  ああ、その伯爵の、なんと美しかったことでしょう!

その火照った頬を胸に抱いて、
私は彼のまぶたに口づけし、眠りに誘った。
  小塔と木々の間で風が荒れ狂っている。
果てしない憎しみで、私は彼を憎んだ。
けれど、その美しさはたまらなく愛おしかった。
  ああ、その伯爵の、なんと美しかったことでしょう!

夜の静寂の中、私は起き上がった/
短剣を鋭く、ぎらりと研ぎ澄ませた。
  小塔と木々の間で風が狂って叫んでいる。
まどろみながら彼が息を吐いたとき、
私はその身体を三度、深く刺し貫いた。
  ああ、その伯爵の、なんと美しかったことでしょう!

私は彼の麗しい髪を撫でつけ、櫛で整えた。
死してなお、彼の姿のなんと気高かったことでしょう。
  小塔と木々の間を風が吹いている。
私は彼の亡骸をシーツで包んだ、
そして彼の母親の足元に置き去りにした。
  ああ、その伯爵の、なんと美しかったことでしょう!

 

 

2026.2.15
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/ladyshalott/sisters.html

To Victor Hugo ヴィクトル・ユゴー殿 啓上

 

To Victor Hugo ヴィクトル・ユゴー殿 啓上

 

演劇のヴィクトル、物語のヴィクトルよ、
幻のような希望と恐怖の雲の紡ぎ手、
フランス人の中のフランス人、人々の涙を統べる王よ/
子供らを愛する人/海峡を越えて
あなたに並ぼうとするすべての者たちの花冠を、
その月桂冠の光の影に沈めてしまう詩聖よ/
冬の如き歳月の重みに、今なお屈することなき
不可思議なる巨人、嵐のごときフランスの声よ!
あなたは我がイングランドを愛していない―と言われます/
私には分かりません—しかしイングランド、フランス、そして全人類は
その歩みを終える前に、一つの民になるでしょう:
そして私は、そのような素晴らしい日を心から願いつつ、
我が息子という若きイングランドに賜った
あなたの溢れんばかりの厚情に、心からの感謝を申し上げます。

 

 

2026.2.11
・ヴィクトルとはフランス語で勝利者という意味です。ヴィクトル・ユーゴー(1802―1885)は政治家としても活躍しました。彼はナポレオン三世と対立して英仏海峡のガーンジー島で15年間の亡命生活を送りました。その間に代表作「レ・ミゼラブル」を書きました。この詩は1876年にテニスンの息子ライオネルがこの地を訪問したときの歓迎に感謝して書かれたものです。

https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/ballads/victorhugo.html

Wages 報酬

 

Wages 報酬

 

戦士の栄光、雄弁家の栄光、詩人の栄光、
 その報酬は、果てしない海に消えてゆく、はかない声に過ぎない―
徳の栄光は、戦い、抗い、誤りを正すこと—
 いや、徳はそんな栄光を求めはしない、栄光を愛するものでさえない/
ただ、歩み続け、在り続けるという栄光を、徳に与えよ。

罪の報酬は死である:しかし、徳の報酬が塵に帰ることならば、
 虫けらや羽虫のごとき生のために、徳は耐え忍ぶことができるだろうか。
徳は至福の島も、正しき者の静かなる座も、
 黄金の木立での憩いも、夏空の下でのまどろみも求めない/
ただ、歩み続け、死ぬことがないという報酬を、徳に与えよ。

 

 

2026.2.11
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/misc/wages.html

‘Flower in the crannied wall’ 「壁の裂け目に咲く花」

 

‘Flower in the crannied wall’ 「壁の裂け目に咲く花」

 

(直訳)
壁の裂け目に咲く花よ、

私はそこからお前を引っこ抜く、
その根っこまでのすべてが手のひらにおさまってしまう、
ちっぽけな花よ—しかし、もし私がお前が何なのかを、
その根っこまでのすべてを、そのすべてのすべてを理解できたなら、
そのとき私は神とは何か、人とは何かを知るだろう。

 

(七五調)
壁の裂け目に咲く花よ、
引っこ抜いたら根っこまで、
まるごと手のひらおさまった、
ちっぽけな花よ—しかしもし、
その根っこまでのまるごとを、すべてのすべてを知ったなら
神と人とは何なのか、きっと私は知るだろう

 

 

2026.2.11
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/misc/cranniedwall.html

Love and Duty 愛と義務

 

Love and Duty 愛と義務

 

この世でついに結末を見出せなかった愛に、
いかなる続きがあるというのか?流れる涙と、砕ける心か?
あるいは、最初からなかったもののように、すべては同じままなのか?
 決してそうではない。巡る時の中で「過ち」が
「真実」の父になることがあるだろうか?賢者に忌み嫌われる
狂気による、自由の片鱗への、盲目的で傲慢な叫びが、
法の体系や帝国に結実することがあるだろうか?罪そのものが
しばしば「太陽」に通じている、雲の玄関になることがあるだろうか?
そして、この驚くべき愛だけが、死んで
道端の塵になるというのか?あるいは若き日の悪夢、自らの亡霊となって、
打ち砕かれた人生の廃墟の中で
鬱々と思い悩みながら孤独な月日を送るというのか!
 もし、それがその通りで、それが本当にすべてなのだとしたら、
小さな脳、石のような心、活気のない日々を見つめるどんよりした瞳、
機械のようにあちらこちらを長々と歩き回る、
決まりきった灰色の人生、そして無感覚な終焉のほうが、よっぽどましだ。
だが、私は君の愛によって、より気高い存在になったのではなかったか?
私は三倍も無価値ではなくなった!「愛」によって
君もまたそのようになった、そして、その年齢よりも優れた人になった。
「太陽」は軌道を走り、「月」は
満ちて欠ける。待てばいい、そうすれば「愛」そのものが、
うなだれた知識の花を知恵という果実に変えてくれるだろう。
待てばいい:私は「時」を、
そしてそれを何らかの完璧な終焉に導く存在を強く信じている。
 ならば誰かが言うだろう、なぜ良きことのために悪しきことを行なわなかったのか?
なぜ愉しみを選ばなかったのか?と。私のしたことこそが、
その答えになるだろう。私は正しきを知り、
それを行ったのだ/人は神ではないが、
最も人間らしくある時、最も神に近づくのだ。―
―だから、これが君と私にとって良きことなのだと思わせてくれ―
不幸なことだ、私の知恵が平穏を命じるにもかかわらず、
心がそれについていけないとは!どんなにか辛かっただろう、
愛に陶然とした、半ば潤んだ瞳が、私の瞳の上に留まる
その切なる、切なる一瞬、敢えてそれを見つめ返さないことが!
君の低い声が震えて、
途切れてしまいがちになる時、私の声を
完璧に保ち続けることが、
―情熱が躍り出して、君の首に縋りつき、
その胸に(望んでやまない安らぎよ!)
脳と感覚と魂を圧していた重苦しい涙の霧を、
雨のように降らせてしまわないよう、
それを縛り付けて、堪えることが!
 愛そのものが、愛に抗って、
私たちを引き離そうとしたのだ、そして「愛」が愛する「義務」が―
ああ、この世の呪いが―愛されながら憎まれるものが―
「死」のように君と私の愛しい抱擁の間に割り込んで、
そして「この方は誰ですか?あなたの花嫁は私です、」と叫びながら、
君から私を引き離したのだ。
       私の言葉を難解と感じる人がいるかもしれない、
しかし、私は彼らに語っているのではない―
いや、君に語っているのでさえない、私の中に住んでいる君に語っているのだ:
君と私の運命は辛いものだ:君もよく知っている通りだ。
「愛」がこのように去ることがあり得るだろうか?一度なりとも
言葉を交わせたのは、良いことではなかったのか?良いことでなかったはずはない。
あらゆる良きものをもたらす緩やかで甘美な時間が、
あらゆる悪しきものをもたらす緩やかで悲しい時間が、
そして悪しきものから生じるすべての良きものが、あの夜を運んできたのだ。
私たちは二人きりで座っていた。
そして心に大きな空洞をつくってしまった切なる願いに、
想い慕う瞳が言葉を与えていた、
それは一生に一度の涙を流しながらも、
見つめる相手を焼き尽くさんばかりだった。
       忘我は、やがて抱擁になって、
最後にしようとして、決して最後にできなかったキスの間に、
いくつもの出会いと別れが、際限もなく生まれては消えた。
そして勧告と慰めの後に、男を強くする
真実の言葉があった/
やがて闇は薄れ、頭の上で
その短い夜に、夕映えと朝焼けの光が
混じり合った/夏の夜は、私たちの声を聞こうと
星たちの間で歩みを止め/星たちは
愛の魔法にかかったように耳を澄ましていた:「時」の輪は
その場に留まったままで回り続けていた、しかし、ついに終わりがやって来た。
 ああ、その時、自らの破滅に突き進むため
覚悟を決めた人々のように、私たち二人は立ち上がって、
盲目的な一つの情熱と苦痛の叫びによって
―ひとつの人生が終わるときの―
死を前にした激しい告発のように、
愛のすべてを掬い上げ、それを言葉にして、
永遠の別れを告げたのだ。
         生きてくれ―それでも、生きてくれ―
人生に必要なものはすべて意志することが可能であると知りながら、
痛切すぎる悲哀に打ちひしがれる必要があるだろうか―
幸せに生きて欲しい/花を慈しみ/私の祝福に
包まれながら!もし私の「影」が君の想いをよぎって
その平穏を乱すことがあるなら、
忘れ去ることはできずとも―すぐにはー
すべてを忘れ去らずとも
それを記憶の最も暗い奥底へと追いやって、
より穏やかな時間に思い出せばいい。
もし私の影が君の夢に現れるなら、
どうか、満ち足りた表情であらんことを、
真実とは裏腹な、穏やかな瞳で、
君に遠くの光を指さし、
あるいはその心の荷を下ろして、
爽やかな目覚めのその時まで、
君を安らかに憩わせんことを、
やがて朝一番のかすかなさえずりが、完全な合唱に変わり、
そして朝が真珠の鍬を引いて、
美しい緑の野原と東の海の彼方の、
渦高い雲に光の畝を立てるその時まで。

 

 

2026.2.1
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/englishidyls/loveduty.html

To J.S. J.S.様 啓上

 

To J.S. J.S.様 啓上

 

山を打つ風も
  開けた野を渡る時は和らぐもの、
そして、穏やかな魂を持つ者には
  世界もまた穏やかなものだ。

その確信が、私を大胆にさせたのだ、
  さもなくば、こうして君に言葉をかけて
君の聖なる悲しみに詩句で踏み込む勇気など
  私にはなかっただろう。

不思議なことだ、私たちが最も頼りとする人たち、
  私たちの手足をその膝に抱いて育んでくれた人たちが、
真っ先に影の中に消えてしまうのは:
  最初に愛した人々こそが、最初に連れ去られてしまうのだ。

神は私たちに愛を授けられる。
  愛すべきものを貸し与えてくださる/
しかし愛が熟した時、その対象は消え去って
  ただ愛だけが、あとに取り残される。

これが時の呪いだ。
  ああ、私も悲しみを知らない者ではない。
かつて私の家の門を「死」が通り過ぎた/
  一人が去って、二度と戻らなかった。

あの人はもう、私に微笑みかけることも―
  語りかけることもない。二年間、その椅子は
空いたままだ。その存在なしに
  今の私もないというのに。

君が失ったのはさらに希少なものだ/この星は
  君と共に天のわずかな円弧を昇って、それほど
遠くに行かないうちに
  突如として闇の中へと流れ去ってしまった。

私は君の弟を知っていた:
  その物言わぬ遺灰に、そして生前の美徳に私は敬意を払う:
これほど清らかで、勇敢で、公正な人物が
  この世に生まれることは二度とないだろう。

その貴い魂が眠りについて以来、
  私は君を近くで見てはいない。
「偉大なる自然」は私よりも賢明だ:
  だから、君に泣くなとは言うまい。

私の目もまた、魂から脳を伝ってあふれる
  露でいっぱいなのだから。
「泣けばいい、涙は心の痛みを和らげるのだから」などと
  説教するつもりもない。

「悲しみ」をそれ自身の主人にすればいい。
  それは、いかなる悦びよりも
自らの深い苦悶を愛しているのだ。
  泣くも泣かぬも―心のままにさせればいい。

私はこうも言わない、『「死」という
  「神」の定めはあらゆる風の中に吹いている』とは/
気高い精神を奪い去る死は決して
  ありふれた偶然などではないのだから。

彼の記憶だけは私たちの心の中に
  長く生き続けるだろう、
太陽が沈んだ後に漂って、夜の半ばまで
  天に留まる、あの切ない残光のように。

虚しい慰めだ!「記憶」は近くに立って
  目を伏せ、その声は喉の遠い
奥底にあり、私が書いている文字の上には
  一滴の涙が落ちた。

私が何を書いたのか、自分でも分からない。
  若い日に兄弟を亡くした君を
どうして慰めることなどできようか?
  それでも、何かを伝えたいと思ったのだ:

彼はまた、私の友人であったのだから:
  君たち二人は私の友であって、私の真実の胸は
二人のために血を流している/しかし
  おそらく今、最もふさわしいのは沈黙だけだろう。

君の悲しみにより弱い言葉を重ねるなら、
  かえって悲しみを深めてしまうだろう。
私自身が安らかに眠る彼に代わりたいとさえ願うほどだが、
  もう筆を置くことにしよう。

安らかに眠れ、優しい心よ:
  眠れ、聖なる霊、祝福された魂よ、
星々が燃え、月が何度も満ちて、
  巨大なる時間が過ぎ去っていく間も。

終わりの日まで眠れ、真実で愛しき魂よ。
  君には、もはや新しく奇妙なことは起こらない。
頭から足先まで、安らぎに満ちて眠れ:
  静かに横たわれ、物言わぬ塵よ、変化の手から守られて。

 

 

2026.1.25
・手紙の受取人のジェームズ・スぺディング(1808―1881)はケンブリッジの使徒団のメンバーで、フランシス・ベーコンの著作の編集者として知られています。この手紙は1832年にスペディングの弟エドワードが急死した時に書かれたものです。
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/ladyshalott/tojs.html

Sir Launcelot and Queen Guinevere A Fragment ランスロット卿とギネヴィア王妃(部分)

 

Sir Launcelot and Queen Guinevere A Fragment
ランスロット卿とギネヴィア王妃(部分)

 

喜びと苦しみが相半ばする魂のような、
天からの涙と微笑みを携えて
日差しの中に雨を降らせながら
乙女のような「春」が再び野に降り立った。
  水晶のような霞が立ち込め、
いたる所で青空の島たちが笑いかけ、
遥か遠い森の奥深くでは人知れず、
そびえ立つニレの木々が
  芳しい大気を吸い込んで緑を蓄えていた。

時にムネアカヒワは歌い:
時にウタツグミは力強い口笛を吹き:
時にハイタカが輪を描けば
災いを恐れて、森は静まり返った:
  深く曲がりくねった黄色い川は
瀬音豊かに草の中を流れてゆき、
生命あふれる大地の上で、
うなだれていたマロニエの芽は、
  完璧な扇形に広がり始めた。

そして、一年がまだ少年だった頃、
ランスロット卿とギネヴィア王妃は
高く澄んだ歓声を上げながら
鹿の潜む茂みを馬で駆け抜けて行った。
  彼女は喜びあふれる「春」の化身のようだった:
草色の絹のガウンの
前を黄金の留め金で留め/
黄金の輪で束ねた
  淡い緑の羽飾りをつけていた。

ある時は、からみ合ったツタの網の上に、
ある時は、さらさらと流れる小川の傍に、
スミレの混じる苔の上に
彼女のクリーム色のラバは足を踏み入れる:
  そして今や、不気味に震える歌声に応え
手綱をシャンシャンと鳴らしながら
ほの暗い夜の荒野を馬で跳び回る
妖精の女王よりも素早く、
  彼女は平原を滑ってゆく。

彼女が陽光と影の中を駆け抜けるたび
心地よい風が戯れかけて、
編まれたその髪から一房の巻き毛を解き放った:
華奢な指先で手綱を操る
  彼女はあまりにも愛らしく、
男ならば誰しも、
その完璧な唇に一度キスするために、
あらゆる至福と現世の富を投げ打って、
  心のすべてを使い果たしたことだろう。

 

 

2026.1.25
・騎士の時代には春に騎士と貴婦人が森に出かけるMayingという行事がありました。
・荒野を馬で跳ねまわる妖精の女王はバラッド“Thomas the Rhymer”をモチーフにしていると思われます。
・この後、ギネヴィアが悪い騎士にさらわれ、ランスロットに救われるというエピソードがあります。

https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/englishidyls/launcelotguinevere.html

Sir Galahad ガラハッド卿

 

Sir Galahad ガラハッド卿

 

我が良き剣は敵の兜を断ち割り、
 我が強靭な槍は狙いを過たない、
我は十人力なり、
 我が心の清きがゆえに。
耳をつん裂くラッパの音が響き渡り、
 鋼の剣は鋼に当たって砕け散る、
折れた槍の柄は空を飛び交い、
 馬と騎士はよろめく:
よろめいて、ガシャンと試合場に転がる、
 そして闘いの潮が引くとき、
香水と花々の夕立が、
 淑女たちの手から軽やかに降り注ぐ。

愛する騎士に注がれる淑女たちの眼差しが
 いかに甘美なことだろう!
彼女らを恥辱と隷属から救うため、
 私は力を尽くして戦おう:
だが、私の心は完全に天上に向いている
 納骨堂や聖堂で、私は膝を折る:
私は愛の接吻を知らず、
 乙女の手を握ったこともない。
より恵み深い光が私を照らし、
 より力強い法悦が心を動かし、震わせるからだ/
ゆえに私は信仰と祈りによって
 行いと意思における純潔を保つのだ。

疾風の中に三日月が沈み、
 一筋の光が私の前を漂い、
暗い木立の間で森が輝き出すとき、
 賛美歌の声が聞こえてくる。
そのとき、私は秘めやかな聖堂に通りかかる/
 声はすれども人影はなく/
聖歌隊の席は空いていて、扉は広く開き、
 ロウソクが美しく燃えている。
雪のような祭壇布は白く輝き
 銀器は清らかにきらめき、
澄み切った鈴の音が鳴り、振り香炉が揺れ、
 その中を厳かな聖歌が響き渡る。

時に寂しい山の湖で
 私は魔法の小舟を見出す/
私は飛び乗る:舵取りはいない:
 闇がすべてを包み込むまで、私は漂う。
優しき響き、恐るべき光!
 三人の天使が「聖杯」を運んでくる:
足を揃え、白い衣をまとい、
 眠っているような翼に乗って空を渡ってくる。
ああ、祝福された幻よ!キリストの血よ!
 闇の潮を滑り下る栄光が
星のように星々と混じり合うとき、
 我が魂は肉体の牢獄を打ち叩く。

我が良き馬に揺られて
 夢見る町々を通り過ぎるとき、
クリスマスの朝を告げる鶏は鳴き、
 通りは雪に静まり返っている。
嵐は屋根の鉛板を叩き、
 剣や鎧を打ち鳴らし、しぶきを散らす/
しかし闇の上には栄光が広がり、
 吹き付ける雹を黄金に染めている。
私は平野を去り、高みに登る/
 身を守る枝の茂みもない/
しかし鳴り響く嵐の中、祝福された姿は
 荒れた沼地や風の野原の上に浮かんでいる。

貞潔の騎士—私に与えられた
 この希望ゆえに、私は恐れを知らない/
私はここでしばしば出会う
 天上の空気を吸うことを切に願う。
絶えることのない喜びに、
 生ける光に包まれた清らかな空間に、
その香りを私の夢の中にまで漂わせる
 永遠の平和の清らかな百合に、私は想いを巡らせる/
そして天使の手に打たれ、
 触れられた私の、この現世の鎧と、
この重さと大きさと、この心と瞳は、
 最も清らかな空気に変わる。

大空の雲は晴れ、
 山の壁から
オルガンの調べが響き渡って、
 高まり、震えて、消えてゆく。
すると木々は揺れ、茂みは頭を垂れ、
 翼は羽ばたき、澄んだ声が舞う:
「おお、正義と至誠の神の騎士よ!
 乗り進め!報いは近い。」
こうして私は宿屋と広間と農場を通り過ぎ/
 橋と瀬と、領地と柵を越えてゆく、
甲冑に身を固め、何があろうとも、私は馬を走らせる、
 「聖杯」を見出すその時までは。

 

 

2026.1.23
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/englishidyls/sirgalahad.html

‘Love thou thy land, with love far-brought’ 「あなたの国を愛せ、遙かなる古より引き継がれたる愛を以て」

 

‘Love thou thy land, with love far-brought’
「あなたの国を愛せ、遙かなる古より引き継がれたる愛を以て」

 

あなたの国を愛せ、物語に満ちた遙かなる
 古より引き継がれ、
 現在において用いられ、
思想の力によって未来へと注ぎ込まれる愛を以て/

真実の愛は、不動の軸を中心に回転する、
 決して卑俗な目的に屈しない愛、
 それはイングランドの気質、自由人、友人、
あなたの同胞、そして不滅の魂への愛である。

しかし、性急な時代の欲しいままにさせてはならない、
 荒ぶる心と弱き翼を持ち、
 いかなる詭弁家の罠にも容易に絡め取られる群衆に
未熟な妄想を与えてはならない。

権能の務めを弱者に委ねてはならない、
 また盲目ではなく、日の光を待っている者から
 一条の光を隠してはならない、
たとえ彼らが、不確かな光に包まれていようとも。

知識を風に乗せて世界を巡らせよ/
 だが、知識に先んじて、
 知識の先駆者たる「畏れ」を
人間の種が蒔かれ、心が育つあらゆる空に飛ばせ。

時代の潮流を見極めよ/
 偏見を、その木目に逆らって断ち切れ:
 されど穏やかな言葉は常に有益である:
あなたの同胞の弱さを思い量れ。

地位や役職、あるいは恩給のために働くな、
 名声を期待するな:
 それは後の世に育ってゆくものである:
標語を過信してはならない:

古い格言に固執せず/
 現代の流行語に支配されず/
 変化に対して速すぎず、遅すぎず、断固たれ:
然るべき時に、立法せよ/

それは「議論」の中から強い拘束力という
 「命」を持って生まれ落ち―
 万人の利益に資するために、
数多くの心にあらゆる角度から吟味されたものでなければならない。

「自然」もまた、寒暖、
 乾湿を使い分け、数多くの強靭化の力を用いて、
 長い工夫の末に
生物の個体の形を完成するのだから。

安逸の中に錆びつかないよう、
 変化が私たちの存在を制御するのは良いことだ。
 私たちは皆、静かな歩みとともに変化していく、
魂の根源を除いては。

ゆえに来るべき変化を、
 去りゆくものと自由に噛み合わせ、
 共感に動かされて滑らかにその役割を果たす、
国家の繋ぎ目として働かせよ。

言うは易く行うは難しだ/
 過去のすべての「時」が明らかにしている通り、
 「思想」が「現実」と結ばれるところには常に、
雷鳴轟く婚礼の夜明けがあるのだから。

今この時も、私たちは内なる葛藤とともに、
 暗闇で苦闘する胎動を聴いている―
 来たるべき年月の「精神」が、
「生」と混じり合おうと切望しているのを。

ゆっくりと養われた力が、
 苦難という学校での完成を待っている/
 かつての統治形態の亡霊や、
強大な国家群の新たなる尊厳―

それらは成長する時代の番人であるが、
 霧の中で茫漠として捉えがたい/
 その周りで海と空は、「力」という
巨大な装置に暗く閉ざされている。

新たなる秩序は適切に組み合わされた
 数多くの変化から形作られるだろう。
 段階的な変化を重んじよ。さもなくば
「不和」の魂が、巻き起こる風と競い合うことになる/

その風はあなたの偶像に捧げられた火を吹き消し、
 その灰をその頭に積み上げさせて、
 我々は父祖よりも賢明であると
しばしば豪語したことを恥じ入らせるだろう。

ああ、それでもなお、もし「自然」の不吉な星が、
 成熟した人々をも、若者のように駆り立てて、
 「真理」の逃げ去る跡を追わせ、
戦いという青銅の橋を渡らせるなら―

もし「新」と「旧」の悲劇的な不和が、
 武装した敵同士のように衝突し続け、
 「原理」は血の中に降り注ぐというのが
「時」の終わりまで真実なのであれば/

それでも心ある賢者は
 罪と恥の中でさえ希望を捨てることはない、
 剣の柄に手をかけながらも、
「平和」そのもののように、動乱の地を歩み/

「派閥」の犬どもが吠え立てようとも、
 言葉と行いによって同胞に仕え続けるだろう。
 知識が剣をもたらしたとしても、
知識こそが剣を取り去るのだと確信し―

両方の陣営から差し込む善の光を愛して、
 決して目を覆うことはなく/
 そして、もし恐るべき必要が生じたなら、
断固として、ただ一撃のもとに打つだろう。

私たちが先人たちが咲かせた花であるように、
 明日は今日を収穫するだろう/
 慎ましい日々を実りあるものにせよ、「停滞」の異母姉妹である
「拙速」を娶ってはならない。

 

 

2026.1.15
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/ladyshalott/lovethyland.html