Ode to Memory ADDRESSED TO ――. 記憶へのオード ――宛

 

Ode to Memory
ADDRESSED TO ――.

記憶へのオード
――宛

 

I.
    あなた、火を盗む者よ、
   過去の泉から、
   現在を輝かせるために、ああ、急いで来てくれ、
    私のささやかな願いを訪れてくれ!
   私を強くし、私を照らしてくれ!
   闇の中で気を失いそうな私を、
   あなた、朝露に濡れた記憶の夜明けよ。

II.
  この前に来たときのように来ないでくれ、
 昼日中に昨夜のような
憂鬱を投げ入れないでくれ、そうではなく東洋の気高い
    柔らかな光を纏って来てくれ。
かつてあなたは朝霧と共に、
 露を真珠にする夜明けの風のキスを
その厳かな額に受けた乙女のように来た、
    そのとき彼女は、あなたのように、
冬の黒い大地にかすかな星の輝きのよう散らばる
確かな実りの約束を与えながら、
溢れんばかりの花々と
東洋の緑の最も早い新芽という甘美な荷物を
そのたゆたう髪に留めていた。

III.
かつてあなたは朝霧とともに来た、
  そして夕べの雲とともに、
あなたが集めた富を私の開いた胸に降り注いだが/
それは一年の最も早い花であって、
     心の庭に根を張っているため、
最も荒々しい風の中でも
 決して萎れることのない、比類のない花々だった。
    夜もあなたの死装束ではなかった。
深い眠りよりも甘美な夢の中で
あなたは幼い希望の手を引いた。
あなたの偉大な存在の光は
その衣の渦を捉えた/そして
  深くとも底なしではない
  半ば到達された未来の天蓋は、
恐れを知らない、幼くとも深い心の上で瞬く
百万の星たちとともに切り開かれた。
そこに人生の苦悩など存在しなかった/
なぜなら、希望はその魂を震わせる鋭く美しい瞳を、地上のいかなる霧も
曇らせられないことを、確かに知っていたからである/
確かに希望は限りない年月から流れ来る
堂々たる音楽に耳を傾けながら、
     天球の傍にいた、
  ああ、私を強くし、私を照らしてくれ!
  私はこの闇の中で気を失いそうだ、
  あなた、朝露に濡れた記憶の夜明けよ。

IV.
出でよ、私はあなたに命じる、立ち上がれ、
数多くの舌を、無数の瞳を持つ者よ!
あなたは私の内なる瞳へと
   蔓を翻しながらやって来はしない、
   最も神聖な記憶よ!
あなたははるか彼方に見える
紫の崖に立つ白い光の柱、
常に響き、輝いている
滝で育まれたのではない:
灰色の斜面を帯のように囲んでいる森から来い、
私の父の戸口の脇に立っている
七本のニレ、四本のポプラから来い、
そして主に、
茂ったクレソンとうねのある砂の上をさらさらと流れ、
あるいはイグサの茂る入り江の暗がりでさざ波を立て、
粗い森からの濾過された贈り物を
   あらゆる曲がり角で窮屈な土の壺に注ぎ込むことを愛する
小川から来い/
   ああ!ここにあなたの足を進めよ!
うねのある高原の
毛の厚い二重あごの
羊の鳴き声を
   一日中私の耳に響かせよ、
打ち棄てられ、露に濡れた暗い地上に
朝の最初の歌が高らかに目を覚ました時、
その時、琥珀色の朝は
低く垂れ込めた雲の下から湧き上がる。

V.
恍惚の瞳は若い精神に
 昔の初めて結婚する
  花嫁のような
 大きな持参金を贈る、
  それは勝利のうちに、
   音楽と甘美な雨
   祝祭の花の雨とともに、
 自ら統べるべき住まいへと導かれる。
あなたはよくぞ成し遂げた、偉大なる芸術家である記憶よ。
 あなたは自らの最初の試みに
  立派な金の額縁を与え/
その最初の作品を深く愛するに違いない、
そして最も甘美な日差しが降り注ぐ
 あなたの多彩な画廊の、物語を持っている壁の
 真ん中にあなたはそれを置く/
     なぜならその発見と
あなたの芸術の新しさはあなたを大いに喜ばせたからだ、
それ以来、あなたが描いた中の最も美しいもの、
あるいは最も大胆なものでさえ、あなたの才能の
初子への愛に比べれば
僅かな重みしか持たなくなった。そのスケッチが何であろうと、
芸術家のようにあなたは
その初期の主な作品を
いつも静かに見つめている:
それが藪のない尖峰の高原であろうと、
あるいは、その上を耳障りなざわめきが吹き過ぎる
海岸に高く積み重なった
砂丘の尾根であろうと、
あるいは広く人の住まない巨大な荒れた湿地で、
数多くの橋の下を掘割の水が、無限の象徴のように、
空から空へと流れてゆくのが見える
質素な小屋であろうと/
あるいは蔓バラが絡み合った
小道に密に覆われた庭や、
黄昏の洞窟へ、
あるいは紫のラベンダーの近くに立つ
冠を戴いたユリの平らな広場へと
下って行く長い小道であろうと:
晩年になって
喧噪の嵐を、
倦怠の風を逃れてそこに隠居し、
再び若い想像力に刺激されて、
  私たちは多面的な心のあらゆる形とともに、
情熱ゆえに盲目にならなかった人々、
繊細な思考と無数の心を持つ人々と
語り合うことができるだろう。

友よ、あなたと、そしてあなたとだけ生きてゆくのは
王冠、笏、そして玉座を持っているよりも
どんなに良いことだろう!

ああ、私を強くし、私を照らしてくれ!
この闇の中で気を失いそうな私を、
あなた、朝露に濡れた記憶の夜明けよ。

 

 

2025.12.14
・火を盗む者とはプロメテウスのことです。
・広く人の住まない荒れた巨大な湿地というのはリンカンシャー東部のthe Fensを指していると思われます。
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/juvenilia/odememory.html

| カテゴリー : テニスン | 投稿者 : 上田エリヤ