The Village Wife/ or, The Entail 村の農婦/ あるいは、限嗣相続
I.
女中頭がおまえさんをよこしたんだね、お嬢ちゃん、新しい地主様が昨晩いらしたんだってね。
バターと卵—そうかい—そうかい。一緒についてってあげようかね、よしよし/
バターは一番いいやつだし、卵も一番いいやつだってことは請け合うよ、
殻を割ったら黄身が半パイントも流れ出すくらいさ。
II.
少し座りなさいな、リュウキンカのワインを一杯どうだい!
私は前の地主様が好きで、娘さんたちが、まるで自分の娘みたいに好きだった、
あの頃は皆仲が良かったからね、地主様と娘さんたちと私と。
一番上のアニーさんだけは別だけどね、どうしても好きになれなかったのさ:
でも末っ子のネリーは、誰よりも可愛かったね、
よく秋に熱病で死んだ私の娘の話をしたものさ:
私は主の御心だと思ったのに、アニーさんったら排水が悪かったせいだってさ、
あの人には全然思いやりがなくて、お悔やみを言ってもらったって全然有難くもなかった。
そう!私の子供らは皆、神様の御許にいるのさ、一人だって残っちゃいない!
それで、限嗣相続権で新しい地主様がいらっしゃって、前の地主様はいなくなったんだったね。
III.
土地は限嗣相続なんだよ、お嬢ちゃん:何のことか知ってるかい?
私はその法律を知ってるよ、弁護士さんが教えてくれたからね。
「男の人がいなくなって、一家の主がいなくなったら—
女の子たちには何の権利もなくって、その次に権利がある男の人が限嗣相続権を引き継ぐ。」ってこと。
IV.
次はどんな人なんだい?なにか悪い噂でもないかい、お嬢ちゃん?—
いや、座んなさい—ゆっくりしていけばいいじゃないか—とっても寒いんだから!—もう一杯飲みなさい!
この時期にしては妙に寒いね!ひょっとしたら雪が降るのかも—
悪い噂を聞きたいわけじゃないけど、知っておきたいのさ。
それに、本ばかり読んでる人じゃないといいんだけどね。でも、この州の人じゃないんでしょ/
そういうのは前の地主様でもう沢山、ここの人たちは学問なんて嫌いなんだ。
V.
地主様は大学の奨学生で、土地には見向きもしなかった—
オート麦にもカブにもジャガイモにもさ—いつも本を手に持ってた、
もう七十近いのに、いつも一人で本を読んでたね。
しかし本って何だい?あんたも知っての通り、何の役にも立たないのさ。
VI.
女の子たちには限嗣相続権がない、それで弁護士さんが言うには、
限嗣相続には厳しい縛りがあって、木一本切ることができないんだってさ!
「木なんか呪ってやる」って私は言ってやったよ、本当に嫌いなのさ、お嬢ちゃん、
私らが土地に肥やしをやってるのに、奴らは草から肥やしを吸い取るんだから。
Vll.
地主様はいつもニコニコしていて、通りすがりの浮浪者にも恵んでやってなさった—
それも教区の最悪な連中みんなにね—ときに目に涙まで浮かべながらさ。
地主様の娘さんたちは皆、それぞれ自分の乗馬用の馬を持ってなさって、
馬丁たちと走り回って、男たちを「狩って」たわね、
いつだって派手に着飾って、新しい服を買ってた。
一方、地主様は大きなフクロウみたいに、鼻眼鏡をかけて座ってた、
嗅ぎタバコのせいで鼻がゴシゴシ洗ってもとれないくらい固くなってたね、
読書と書き物の合間に、一日に一箱も吸い上げるんもんだからさ、
それにあの人は鉄砲でキツネを追いかけたり、鳥を追いかけたりもしなかった、
ウサギの一匹も撃ったことがなくって、それは息子のチャーリーに任せてた、
自分の池で釣りをしたこともなかった、チャーリーはカワカマスを釣ってたけどね、
あの人はこの土地で生まれ育ったわけじゃないから、どうも馴染めなかったみたいだね/
でも聞くところによると、汚ならしい古い本に三十ポンド以上も出すんだってさ、
それに自分でも古い本を書いてたんだから、貧乏になることは私にゃ分かってたんだ/
あの人は—恐ろしくていくらとは言えないけど—古い傷だらけの石に金を払って、
土の中から塊を掘り出して、茶色の壺と骨を見つけて、
使えない古いお金を女王様のちゃんとした金貨で買って、
見るのも恥ずかしい、小さな素っ裸の像を買って/
でも請求書なんか一度も見たことがなくって、何一つ気にしなかったのさ、
本以外は何も知らなかった、しかし本なんて、あんたも知っての通り、何の役にも立たないのさ。
VIII.
でも前の地主様の奥様は、生きている間は皆をきちんとさせてたね、
生きている間は、娘さんたちがここに来たことは一回もなかった/
でも奥様がなくなった後は、私らとお子さんらと使用人で仲良くしてた、
皆うちに出入りして、よくお茶を飲んだものさ。
しっかし!娘さんたちが奥様のやり方を、奥様連が娘さんたちのやり方を
話すのを聞いてどれだけ私が笑ったことかね—そのうち話してあげようね。
アニーさんだけは、母親そっくりでとっても気取っていて—
奥様とこの大事な娘さんだけは—この家の敷居をまたいだことはなかったね。
IX.
地主様は微笑んで、微笑んでいたけれど、とうとう怯え出した、
そして息子を呼んだ、弁護士さんから立て続けに手紙が来たもんだからさ/
でも地主様は息子を怖がってたから、ネズミのようにおとなしく言ったのさ、
「すまないが、君には限嗣相続権を放棄してもらわなければならない、さもなければ女の子たちが救貧院に行くことになる、
私には大きな借金があることが分かった、君に少し助けて欲しい、
君が限嗣相続権を一部放棄してくれるなら、私はまだ助かるかもしれない。」
X.
でもチャーリーは耳を後ろに倒して、断固「嫌だ」って言ったそうだよ。
限嗣相続で土地は僕のものになったんだ、手放すなんてまっぴらご免だ!
ねえ!父さん」ってあいつは言った、「なぜ本を売らないんだい?
父さんの本の中には、その重さの金の値段で売れかもしれないものがあるって聞いたよ。」
XI.
地主様は本を山のように、山のように持ってなさったね、私はこの目で見たんだ、
でも娘さんたちはその真ん中のページを破り取っては焚きつけにしてた/
だからあの大きな古い本のほとんどは、売ろうとしても少しも値がつかなかった、
それで地主様はもう一度チャーリーに、限嗣相続権を放棄するよう頼んだのさ。
XII.
チャーリーみたいな奴は二人といないだろうね—あいつはこの辺ではとんでもない暴れん坊でね、
地獄の底をどんなに歯の細かい櫛で浚ったって見つかりゃしないよ—
高いワインを飲んで、百姓のエールを飲んで酔っ払って、
娘たちにも他のものにも狂っていて—そして限嗣相続権を放棄しようとはしなかった。
XIII.
小川伝いに来たんだね/そこにイバラが生えてただろ、
五月に、今年ほど真っ白に咲いているのは見たことがないね—
あの辺りでチャーリーが跳んだんだよ—このまえ、ちょっと怖かったよ、
暗い中に白いものが見えてさ、チャーリーの幽霊かと思っちまった。
「ビリー、跳べ!」ってあいつは言ったのさ—小川の土手はとても高いのにね、
馬は荒くれビリーって呼ばれてたのさ、毛一本の乱れもなかったのにね/
でもビリーはチャーリーの上に後ろ向きに落っこちて、チャーリーは首の骨を折っちまった、
だから限嗣相続はお終い、あいつはあの小川で限嗣相続権を失くしちまったのさ。
XIV.
こうしてあの人の限嗣相続権は無くなって、本はなくなって、息子は死んじまった
地主様は微笑んで、微笑んでいたけれど、頭を上げようとはしなかった:
いつだって優しい人だった地主様!あの人は微笑んでいた、友達がいなかったからね、
そして親子が一緒のお墓に入って、みんなお終いになった。
XV.
神様に召されてもいないし、お金もないくせに、プライドだけは高い牧師は、
間違いない確かな来世の幸せを読み上げるさ/
でも、どれだけ祈っても、祈っても、借金を踏み倒して死んだ人たちを、
神様がそう簡単に天国へ入れて下さるとは、私には思えないね。
でも、森の中で哀れな年寄りの地主様の上に土がバラバラッと落ちたときには、
私も娘さんたちと一緒に泣いたよ、あの娘たちも決して幸せにはならないだろうからね。
XVI.
のっぽのモリーは若い将校と駆け落ちして、
その後の消息は誰も聞いてないんだから、どうせ悪の道に走ったのさ!
ルーシーは片足が悪くて、恋人なんてできたことがなかった—
変てこで不格好なルーシーさん!私たちは「びっこちゃん」って呼んでたね!
ヘティは足は悪くなかったけど、頭が弱かった、
ジニーは熱病で頭がその卵みたいにつるつるになっちまった、
ネリーはゆりかごの頃から牛みたいに口がうるさくって、
あの娘は引っ越さなきゃね、お嬢ちゃん、でなきゃどうしてもお相手は見つかりっこないさ!
そして私の仲間の前で、私の目の前で私を
「身の程知らずの無知な村の農婦」って呼んだアニーさんも同じだね、
一番年上の、今や随分年取ったアニーさんのことさ、
あの娘ついてはもっといろいろ知ってるけど、それはとっても言えるようなことじゃない!
XVII.
だから、年取ったアニーさんが、自分たちがいなくなったら
私がすぐに悪口を言うだろうなんて言ったのには、いい気はしなかったね、
いやいや、しっかし!あの人たちがいなくなった時、どれだけ私が泣いたもんかね、そして私たちのネリーは私に手を差し伸べてくれたんだ、
土地に縁のある地主様と娘さんたちのためなら、私は何でもして差し上げたかったよ/
本なんて、言った通り、何の役にも立たないのさ!
でも私は二十年以上もバターと卵を届けてお役に立ったんだ。
XVIII.
いつも言った通りにお金を払って下さってたから、私はいつもあのお屋敷と取引してたのさ、
あの人たちはバターって何か、卵って何かをよく知ってなさったね/
出鱈目な生活をしていたけど、そう簡単に満足する人たちじゃあなかった、
私が鶏たちにトウモロコシをやって、ご覧の通り大きな卵を産むようになるまではね/
うちのバターにはラードを入れてないよ、ウィリスの農場ではそうするけどね、
もう一口ワインを飲んでごらん—大丈夫だよ。
XIX.
それで、限嗣相続権で新しい地主様がいらっしゃって、前の地主様はいなくなったんだね/
ゴロゴロっていう馬車の音は聞こえたけど、寝間着を着た後だったのさ/
だからまだ私は新しい地主様を見てない、夕べとても遅くいらっしゃったんだからね—
こらっ!!!エンドウ豆の畑に鶏が!どうして門を閉めとかなかったんだい?
*原文はリンカンシャー訛で書かれています。
2025.12.13
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