Eleänore エレアノーラ

 

Eleänore エレアノーラ

 

I.
あなたの黒い瞳が開かれ、
初めて見上げたのはイングランドの空ではなかった、
   外から内へと取り込まれて
幼いあなたの心を形作ったものは
ここには何もない。
人里を離れた
ヒマラヤスギの森の一マイル下で
夏の朝、あなたは生まれた。
あなたの豊かな額をなでたのは、
 私たちのオークの間を吹くそよ風ではなかった、
光あふれ、影の漂う、
 麗しい土地にあなたは育ったのだ。
東方の妖精は
  あなたが生まれたとき、
   幼いあなたを喜ばせようと
霊気漂う小川の古い水源や、
紫の山々の奥深く、
  そして陽の当たる海岸の影のある入り江から、
   宝石や貝殻、星のように輝く鉱石といった、
   この世の選りすぐりの富を携えて、
  あなたの揺りかごを飾ったのだ、エレアノーラよ。

Ⅱ.
あるいは、黄色い縞模様の蜂たちが、
香り高いそよ風に乗って
  半開きの格子窓から忍び込み、
   独りで寝ている幼子のあなたに、
  妖精の庭で集めた純白の蜜を与えたのだ―
  絹のように柔らかなひだに包まれて、
  沈み込むような羽毛の上で、一人夢見る輝かしい幼子は、
群がる蜂の羽音に包まれて、
  夢の多い眠りに誘われたのだ。

Ⅲ.
誰があなたに仕えるだろうか。
夏は自ら、黄金の盆に
  黄金の皮をまとった
  果実を載せてあなたに仕えるだろう、あるいは初秋は、
光を通さないほどにブドウの葉が茂り、
香り高い蔓草に咲く、幾多の深い色合いのつり鐘形の
   花々に目が眩むような木陰で、
大気がすべての
  空の上で眠り、
  翳りゆくすべての岸で
  岩山が夕日を浴びて
湖を真紅に染め上げる頃、あなたに仕えるだろう、
      エレアノーラよ!

Ⅳ.
どのような満帆の詩句で言い表し、
  どのような韻律で讃えられるだろうか、
   あなたの白鳥のような気品の
豊かに流れるハーモニーを、
      エレアノーラよ?
   あなたに漂う優雅さの
華麗なシンメトリーを、
      エレアノーラよ?
   あなたの身のこなしと眼差しのすべてを、
   その神々しい顔立ちのすべてを、
      エレアノーラよ、
   そしてあなたの上に留まり続ける、
   沈まない夕陽のような輝きを?あなたの中には、
   唐突なもの、欠片のようなものは何一つない/
 一つの聖所の一つの香炉から放たれる、
   二筋の自由な煙のように、
   想いと動きは混じり合って、
 永遠に溶け合う。動きは
 お互いの中に流れ込んで、あたかも、
 あなたの周りに息づく
   音のない旋律と、
 お互いから絶えることなく
  深くまろやかに引き出される
豊かな休符に合わせて転調しているようだ/
 誰があなたを言い表せるだろうか、エレアノーラよ?

Ⅴ.
私はあなたの前に立って、エレアノーラよ/
   あなたの美が、日に日に、刻一刻と、
次第に花開いていくのを見つめる。
あなたの深く神々しい微笑みが
   黄金の雲の中から現れるかのように
ゆっくりと溢れ出すとき、私はうっとりと物想いに耽る。
あなたの深い愛を宿した瞳の倦怠が
   私のところに漂ってくるとき、いつも
私はうっとりと物想いに耽る。このまま
   陶酔の中に、歓喜の中に囚われて、
離れた場所から永遠にあなたを見つめ続け、
崇めていたいと私は願う、
静穏にして、荘厳なエレアノーラよ!

Ⅵ.
時折、強く目を凝らして見つめるとき、
あなたの大きな瞳の中で
幾重にも折り重ねられた想いが、微笑みながら眠り、
ゆっくりと目覚めては、豊かに満ち、
深まっていくのが見えるような気がする、その光の前で、
私は目を逸らすことも、伏せることもできず、
ただ無に等しい存在になる。
それはまるで、至高の天に座する星が、
見ている間に、ゆっくりとその球体を回転させ、
輝きに満ちてゆき、太陽のように動かなくなったかと思うと―また
  ゆっくりと褪せて、元の姿に戻っていくかのようだ。
   想いはそれほどまでに豊かに満ち、深く、緩やかに、
   あなたの大きな瞳の中で行き交うのだ、
  荘厳なエレアノーラよ。

Ⅶ.
高みに留まり、世界を
  疑念と恐怖で覆っていた雷雲が、
夕暮れの大気を漂ううちに、
空一面の黄金色に変わっていくように/
あなたの前では、あらゆる情熱は
その精神の芳醇に触れることによって
静かな瞑想の中で
  炎と荒ぶる力を失い、
穏やかな喜びと、
  静観という贅沢に陥って熱を失ってしまう。
それは波が、静かな入り江に打ち寄せて
  滑るように進み、やがて静かに立ち止まって
   岸辺の景色をありのままに映すかのよう。
あるいは時に膨れ上がって、
 外海のうねりそのままに
 陸地に押し寄せるかのようだ。
  まさにそれと同じ力が、
  あなたを見つめる情熱の
 魂と感覚のすべてを支配する。
弓の弦を緩めた、物憂げなエロースは
 頬杖をつき、翼を垂れて、
 あなたを見つめている、
  そして、そのまま微睡んでいたいと願っている、
  静穏にして、荘厳なエレアノーラよ。

Ⅷ.
しかし、愛を囁く香り高い風がそよ吹く
日の入りと月の出の間に、
 あなたが髪をほどいて彷徨うとき/
  あるいは、薄暗い広間で、
絹のクッションに半ば身を預けるとき/
   私はその優美さに目を奪われ/その顔に
  心を奪われ、
   動けなくなって魔法の眠りに落ちる/
  そして血管を伝って全身に
   気だるい炎が
 とろけるように、ゆっくりと広がってゆく。やがて
   その薔薇色の唇から私の名が
 流れ出す、その時、激しい
  耳鳴りがして、
   舌は震えてもつれ、
  顔面蒼白になり、息は止まって、
  私は気を失いそうになり、熱い命の
狂おしい滴の溢れそうな、贅沢な死の杯を飲み干す。
   あなたから聞きたい言葉を聞く前に、私は
    その歓喜に死んでしまう/
    しかし、もう一度私の名前を呼んでほしい、
 私は永遠に死に続けたい、
 そのように死に続けたいのだ、エレアノーラよ。

 

 

2025.12.26
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/juvenilia/eleanore.html

| カテゴリー : テニスン | 投稿者 : 上田エリヤ