The Dying Swan 瀕死の白鳥
I.
その平原は草深く、人跡未踏で、何もなく、
広く、荒涼としていて、空が開けていた。
その空は至る所、
陰鬱な灰色の屋根裏のようだった。
川は声をひそめて流れ、
そこに瀕死の白鳥が漂っていた。
そして、大きな声で嘆いた。
真昼だった。
物憂い風が絶えず吹き続け、
葦の先端を捉えては過ぎ去って行った。
II.
遠くには冷たく白い空を背に
青い峰々がそびえ立ち、
その頂に白い雪を輝かせていた。
川の上では一本の柳が泣いて、
風がため息をつくたびに波を打っていた/
上空では、ツバメが風の中を、
我が物顔で飛び回っていた。
そして、遠く、緑深く静かな湿地には、
紫、緑、黄色に彩られた
入り組んだ水路が眠っていた。
III.
白鳥の野生の死の賛歌は
悲しみの中に秘められた喜びによって
この打ち捨てられた土地の魂を捉えた/
始めその歌声は低く、豊かに、澄んでいた/
そして中空を漂い、
弱々しく広がって、
嘆きの歌はいつか、
あるいは遠くへ、あるいは近くへと忍び入った/
しかしやがて、その荘厳な歓喜の声は、
不思議で多彩な音楽とともに、
自由で大胆な祝歌になって流れ出した。
まるで強大な民族が
オーボエ、シンバル、金のハープで歓喜し、
その喝采の騒ぎが遠く、
都市の開かれた門を通って、
宵の明星を眺める羊飼いのところまで聞こえてくるようだった。
そして、地を這う苔や這い上る蔓草、
白い湿った柳の枝、
そよぐ葦の波のようなうねり、
こだまが響く土手の、波に浸食された入江、
そして、寂しい小川や池に群生する銀色の湿地の花々は、
渦を巻く歌の洪水の下に飲み込まれた。
2025.6.4
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/juvenilia/dyingswan.html
テニスン小曲集 幡谷正雄訳 大正14年
https://dl.ndl.go.jp/pid/977732/1/57