Columbus コロンブス
鎖です、我が君よ:眉を吊り上げられているのは、
私たちが身に付けているものに、いささか驚かれたからでしょうか。
私たちが黄金の島から持ち帰ったのは、この鉄なのです。
王は、かつて王御自ら玉座から立ち上がられ、
臣民の前でご自分のご兄弟になさるように
挨拶を賜られた者に、
もったいなくも殿下が謁見を賜られることをご存知なのですか?
バルセロナでは―まだ髭も生え揃っておられない
殿下に拝謁いたしました。ええ、あの街は私を迎えるために
飾り立てられ、私の名を歓呼しておりました/王と女王は
私に席に着いて話をするように、そして私の航海について
すべてを物語るようにと仰せになりました。私が話し出すと、
「静まれ!」という声で群衆の歓呼は収まりました。
そして私が話し終えると、王と女王は玉座から降りられ、
未知の領域で私を導いて下さった神を讃えて、
涙に濡れて、跪き、手を挙げて、心から跪かれました。
そして「讃美歌」が高らかに天に昇りました。
大洋の提督に鎖です!鎖です、
聖ヨハネが私について預言した通り、
新しき天、新しき地を与えた者、
スペインの王たちにそのすべての戦いよりも
多くの栄光と帝国を与えた者に!鎖です、
沈む太陽にその舳先を向け、
西を東にし、竜の口を航海し、
世界の山にたどり着き、
楽園から流れ出る川を見た者に!
鎖です!私たちは、私たちと私たちの息子たちは
永遠に、大洋の提督なのです。フェルディナンド陛下と
私たちの聖なるカトリック女王が署名された―
大洋の―インディアスの―提督という―
私たちが決して譲るつもりのない私たちの権利、
私たちが成したことのみならず、
私たちが成していたかもしれないすべてのことへの報酬―
私たちのより力強い人生の広大な機会―
十八年間、うちスペインでの七年の歳月が
失われたのです、後世において乳飲み子でさえ
学ぶことになる―地球は球体であるという―真実を
諸宮廷と諸王にお示ししたにもかかわらずです。
殿下はサラマンカにお出ましになったことがおありですか?ない。
私たちはそこでスペインのすべての学識、
彼らのすべての宇宙論、天文学的憶測に触れました、
しかし、黄金の憶測は完全な真理の環への明けの明星です。
憶測ではない!私は自分のゴールを確信しました/
それを異端とした者たちがいました、しかし、間違っていました。
ダビデ王は天を獣皮、大地を覆うテントとした、
したがって、この大地は平らなものである:
ある人々は古のラクタンティウスを引用しました:木々が
下向きに伸び、雨は上向きに降り、人間が天井に張り付く
蝿のように歩くことなどあり得るのか?一方、
偉大なアウグスティヌスは熱帯で
息をできる者などいない、と書いています/二人のアダムがいて、
二つの人類があると言うのなら、それは神の御言葉に
真っ向から反しています:こうして私は打ち負かされ、
そして主に教会によって意気消沈させられました。
そしてスペインに背を向けて、再びフランスや
イングランドに訴えようと考えました/しかし、私たちの女王は
私を呼び戻してくださいました。ついに陛下方は、
この大地が球体であることを半ば確信されたからです。
すべての祝福された父と子と聖霊にすべての栄光あれ、
祝福された私たちの主の母、そして聖なる教会に
すべての栄光あれ、私はこれらから毛一本ほども
異端へと逸れたことはありません、
私は、成し遂げるために来たことを、成し遂げたのです。
まだです―まだ申し上げることがあります―昨夜、夢を見ました―
最初の航海で、最初の乗組員の恐怖、
その悪態と呻き声に悩まされた夢です。
テネリフェ島が上げる巨大な炎の旗、
古い友人のように、私たちの最も大切な時に
裏切って乗組員を怯えさせたコンパス、依然として
西へ吹く風、そして海藻の生い茂る海―ついに、
陸鳥、そして実をつけた枝、
彫られた杖―そして最後に光、
グアナハニを照らす光!しかし私はその名前を変えました/
サン・サルバドルと呼ぶことにしたのです/そして私が見つめていると
光は段々大きくなって―あの異国のヤシの木、
あの美しい新たな自然の驚異―あの
インドの島ではなく、私たちの最も古い東、
モリアとエルサレムの上に明けてゆく
広大な空を現しました/そして私は主の栄光が閃いて、
ジャスパー、サファイア、カルセドニー、エメラルド、
カーネリアン、サルディウス、クリソライト、ベリル、
トパーズ、クリソプラズ、ジャシンス、アメジスト
―そしてあの十二の真珠の門―からなる懐かしい町を
照らし出すのを見ました、私は目覚め、そして思いました―死―死ぬのだと―
私は子羊の書に記されていて、太陽も月もない、
完全な光、主の栄光の中を歩くのだと―しかし、違いました!
主が私にこの明るく奇妙な夢を送り賜ったのは、
スペインがムーア人と戦争していた時の
私の秘密の誓いを思い出させるためだったのです―
私はスペインとともにムーア人と戦っていました。
そのとき、墓の中から二つの声が聞こえてきました、二人の修道士が、
もしスペインがイスラム教徒をその国境から追い出したなら、
エジプトの凶暴なスルタンがキリストの聖なる墓を破壊し、
荒廃させるだろうと叫んでいたのです/そこで私は誓いました、
もし我が君主たちが私の願いを聞き入れて下さるなら、
あの新世界から私が持ち帰るいかなる富も、
この古い世界で、サラセン人に立ち向かう新たな十字軍を率い、
聖なる墓を解放するために捧げます、と。
金ですか?もし放っておいて下さっていたなら、私は殿下の王子様たちに
十分な金をもたらしていたでしょう!ただのジェノヴァ人でしかない私は、
ムーア人であり、そして大都の城壁を突破し、
大ハーンの宮殿をムーア人に与え、
あるいはプレスター・ジョンの聖なる王冠を掴んで、
ムーア人に投げ与えたよりも
酷い扱いを受けています:しかし、もし私がソロモンが遠征して、
今や富を回復したオフィルからソロモンの船団が持ち帰ったものと
同じ金を持ち帰ったとしても、それは私を富裕にしたでしょうか?
スペイン王家の紋章を私のそれに組み込んで頂いたとはいえ、
私はスペインの青い血を持っていません。スペインの青い血と黒い血、
カスティーリャの貴族と囚人が、イスパニョーラ島から
私を追い出したのです/ご存知のように、家では、
最も高い頭の周りを常に飛び回り、遠くで
こっそりと真実を囁く蝿ども―これらが私と私たちの賢明な王を、
私たちの義なる女王さえをも―あまりにも苛立たせ、
私は、あまりにも中傷されたので、私と私の中傷者との間に
裁きを下すために―重みと価値のある人物を任命してくださるように懇願したのです―
フォンセカは宮廷における私の主敵です、
両陛下は私に彼の道具であるボバディッラを送られたのです、
獣のように無知で無能な者を―
愚かで不敬で、思慮がなく貪欲な者を―彼は
私の住居を略奪し、私の書類を没収し、私の捕虜を解放し、
王室への反逆者を養い、王室の農場をただ同然で売り払い、
すべての者にほとんど自由に鉱山を去ることを許可し、
私と私の善き兄弟たちを鎖で縛って本国に送り、
そして容赦なく金を集めたのです―一つの塊は
四千カステリャノス近くの重さがありました―彼らが
私にそう言ったのです―それが彼を深い海に沈めたのです―
その地方のハリケーンが彼に襲いかかり、
私たちが発見した海が彼と彼の金にのしかかって/華奢な小帆船は、
私のものだった金と一緒に、幸運にも岸にたどり着きました。
そこには神の御手のしるしがあったのです。
そして神は
私にそれ以上のしるしを与えられました。おお、我が君よ、
誓います、私はベラグアの黒い夜の
雷鳴の間に、声を聞いたのです、
「信仰の薄い者よ、なぜ信じようとしない!
私はお前が生まれたときから、お前とともにいたのではなかったか?
私はお前に大洋の鍵を与えなかったか?
お前に時の終わりまで続く栄光を与えなかったか?
私がお前を欺いたのか、それとも世界がお前を欺いたのか?
耐えよ!お前は人々のためにあまりにも良いことをしたので、
人々はお前を非難するのだ:私の息子にも
そのようにしなかったか?」
そして一度ならず、
疑念と雲と嵐の日々の中で、希望が溺れてほとんど
視界から消えそうになった時、私はその声を聞きました
「落胆するな。私はお前の手を引いて導いている、
恐れるな。」そして再び私はその声を聞くでしょう―
主が私の人生のすべてを導いてくださったことを私は知っています、
私は再びその意志—声―を遂行するために
まだ老い過ぎてはいません。
それでもなお、我が君よ、
捨てられ、追いやられ、宮廷と王に嘲笑されて、
私は一人ここに横たわっています―
最初に発見した者が飢え―後追いをした者たち皆に
富の花が咲く―そういう世の中です―そして私は、
自分のものと呼べる屋根もなく、
さらに食物を買う小銭さえなく、
そして、私が悪党の群れのために
いかなる西への扉を開いてしまったかを見ています、そこを通って
殿下のスペインの欲望、悪徳、暴力、貪欲が、
あのすべての幸福な裸の島々に流れ込んだのです―
殺されるか奴隷にされたその親切な土着の王たち、
スペイン人の愛人になったその妻たちと子供たち、
血に沈んだその無邪気な歓待、
空腹で死んだ者、鞭に打たれて死んだ者、
重労働で死んだ者、自ら命を絶った者―
ええ、愛情深い母親たちは、スペインへの憎しみゆえに
気が触れて、胸に抱いた乳飲み子を殺してしまうのです―
ああ神よ、イスパニョーラの島の楽園で
私たちが見つけた無垢な人々!
彼らは私たちを天から降った神々だと思ったのです、
そして私たちは彼らを地獄の悪魔に引き渡したのです/
そして私自身、私自身にも罪がないわけではありません、
時々、私は先頭に立たない方がよかったと思うことがあります。
ただ、私たちの聖なるカトリック女王の幻だけが、
私に微笑みかけ「慰められよ!
この信条なき人々はキリストのもとに連れてこられ、
ローマの聖なる統治を受け入れるであろう」と仰るのです。
しかし、十字架をそこに運んだ私たちが、
十字架が嫌悪する罪を食い止めたがゆえに、
私たちのインディアスにおけるローマの代理人である、
あのカタルーニャの小修道士によって破門されるなどと
誰が夢に見たことでしょうか?私たちのスペインへの忠誠の
この硬い記念品が、宮廷のいかなる友人よりも長い間、
私たちの傍にいるなどと誰が信じるでしょうか?しかし、
お許し下さい―酷過ぎます、不当です、私は苦痛に苛まれています。
ご覧ください、それは私のベッドから垂れさがっています、
それを私の墓に埋葬してもらいたいと思っています。
殿下、神御自らのお声だけが死者の無実を証明できる
急速に移り行く時代の中で―おそらく、
かつて地球上で最も騎士道精神にあふれる種族だったスペイン、
地球上で最も強大で富裕な王国だったスペイン、
私がそのようにしたスペインが、私を掘り起こし、
この古いスペインの、あるいは私がスペインに与えた
より広大なスペインの聖堂に私を安置しようとするでしょう。
すると、私の墓の傍らに立つ誰かが言うでしょう。
「クリストファー・コロンの骨をご覧なさい」―
「はい、しかしあの鎖は何を意味しているのですか―鎖は?」―
その時、答えねばならない
その親切なスペインの子は哀れです「その骨は、
その鎖に縛られて、彼が世界のために
鎖から解き放った大西洋の上を送り返されたのです。」
天国から地獄と煉獄の魂をご覧になっている女王よ、
彼らとまったく同じく
私は苦しんでいます―今のところは。お待ちください、
私の息子がすぐにここに参ります:息子は
骨と骨をすり減らし、痙攣しながら話す私よりも
上手く話をしてくれるでしょう。
お待ちください。もう一言だけ。
殿下は宮廷で。私を弄ばれる
フェルディナンド王に是非ともお伝えいただきたいのです、私の人生は
王や取り巻き貴族たちとの遊びではなく
―難破、飢餓、熱病、戦闘、暴動、―見過ごされ、黙認された―裏切りでした、
私は死ぬまで王に忠実であって、準備ができています―我らが聖なるカトリック女王―
私の最初の航海のために喜んでご自分の宝石を質入れされ、
私がカトリック信仰を広めることを希望とされ、
鎖とともに戻ってきた私と一緒に泣いて下さり、
今や祝福された聖母の隣に座っておられ、
そのために私が昼も夜も祈りをお捧げしている―
女王は崩御してしまわれましたが―しかし陛下に
お伝えください、私は痛風に苦しみ、
陛下への奉仕ゆえの痛みに悶えながらも、
最後の航海に出る準備ができております、
そして、もし王が聞き届けて下さるのならば、
サラセン人に対する新たな十字軍を率い、
そして聖なる墓を捕囚から救う準備はなおさらできております。
行ってしまわれるのですか?私は老いぼれて、軽んじられています:殿下が
ここにいらっしゃるには勇気が要ったことでしょう?ささやかな感謝を捧げます!
私はただの外国人、そしてジェノヴァ人でしかありませんのに。
2025.11.14
・コロンブスを支援したのはフェルディナンド2世とイザベル1世のスペイン両王でした。
・コロンブスは入植者に讒言され、1500年に査察官に逮捕されてスペインに送還され、全ての地位を剥奪されました。
・グアナハニはコロンブス到達時のサン・サルバドルの現地名です。
・ジャスパー、サファイア…の町とは黙示録に予言された新エルサレムのことです。
・プレスター・ジョンは中世に存在が噂された東方の強大なキリスト教国の君主です。
・オフィルはソロモン王が紅海から船出して大量の金を持ち帰った地で、その場所には諸説あります。
・ベラグアはスペインの中央アメリカ植民地の呼び名です。
・カステリャーノはスペインで金のみに使用された単位で、1カステリャーノは約4.9gです。従って四千カステリャノスは約19.6Kgです。
・史実ではイザベル1世は1504年に崩御しており、コロンブス逮捕の時はまだ存命でした。コロンブスが話しかけている相手は、その子供がprinceと呼ばれているので王の子であり、髭があるので男性と思われます。カトリック両王の男児はフアン・デ・アラゴン・イ・カスティーリャ(1478-1497)だけですが、1497年に死去しており、史実とは一致しません。
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/ballads/columbus.html