The Goose ガチョウ

 

The Goose ガチョウ

 

私はやせこけた、年老いた貧しい奥さんを知っていた、
 着ている服もボロボロで、それはひどいものだった/
その戸口に見知らぬ男が大股でやってきた。
 風の強い日だった。

彼は一羽のガチョウを抱いていた、
 彼は訳と理由を言った。
「さあ、このガチョウを受け取って、暖かくしなさい。
 嵐の季節だ。」

彼女は白いガチョウの足を掴んだ。
 一羽のガチョウ―それは大したものではなかった。
ガチョウはクワックワッと鳴いて、騒々しく
 黄金の卵を産み落とした。

彼女はガチョウを放り出して、お宝を掴み、
 走ってご近所に知らせに行った。
そして自分を祝福し、自分を罵り、
 そしてつらい仕事から解放された。

そしてご馳走を食べて、楽に暮らし、
 丸々と太って元気になって、
重々しい教区委員が帽子を脱ぎ、
 牧師が作り笑いで会釈するようになった。

そうして座って、男女の召使いにかしづかれ、
 彼女は自分の心が誇り高くなるのを感じた/
しかしああ、白いガチョウは卵を産むほどに
 ますます大声でコッコッ、クワックワッと鳴くようになった。

ガチョウはこちらをグチャグチャにし、そちらでクックッと笑って、
 年老いた奥さんの癪に障った/
彼女は肘掛け椅子に座ったまま身をよじって、
 フライパンと鍋を投げつけた。

「いまいましい喉め、扁桃炎で詰まっておしまい!」
 そして怒りは次第に強くなった。
「やっておしまい、ガチョウを捕まえて、首を絞めておしまい。
 この声はもう聞きたくない。」

すると犬はキャンキャン吠え、猫はニャーニャー鳴き、
 爺さんは走り、婆さんはよろけた。
ガチョウはこっちへ飛んでは、あっちへ飛んで、
 家中が大騒ぎなった。

あちらもこちらもひっくり返って、
 全員がジタバタジタバタともがいた。
その戸口に見知らぬ男が大股でやってきた。
 風の強い朝だった。

彼は腕にガチョウを抱えて、
 軽蔑して言った。
「寒くしてもいいし、暖かくしてもいい。
 嵐の朝だ。」

荒れ狂う風が、庭園と平原から、うなりを上げてやってきて、
 屋根裏でガラガラと音を立て、
全てのテーブルがもう一度ダンスをして、
 煙突の半分が崩れ落ちた。

割れた窓ガラスが吹き込んで、火が消え、
 突風は激しく、さらに激しくなった。
彼女の帽子は吹き飛ばされ、服は巻き上げられて、
 食料庫はつむじ風に一掃された/

そして何もかもがバラバラになってしまったのだが
 彼女の一家に怪我はなかった。
彼女は言った。「悪魔よ、あのガチョウを持って行け、
 そして神よ、あの見知らぬ男を忘れたまえ!」

 

 

2025.6.26
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/ladyshalott/goose.html

Far-Far-Away 遠く―はるか―遠く

 

Far-Far-Away 遠く―はるか―遠く

 

(音楽のために)

大地の緑が天上の色に溶けてゆく、
慣れ親しんだ野原から、彼を誘い出したものはなんだろう、
  遠く―はるか―遠く?

彼の故郷の谷の、最も優しい音は何だったのだろう?
リン、ラン、ローンというまろやかな、夕暮れの鐘の響き
  遠く―はるか―遠く。

どのような曖昧模糊とした世界のささやき、神秘的な痛みや喜びが、
少年時代の彼に、その三つの言葉でつきまとったのだろうか、
  遠く―はるか―遠く?

彼の人生の夜明けからの囁きだろうか?
死の扉の向こうの、美しい夜明けからの息吹だろうか
  遠く―はるか―遠く?

遠く、遠く、どれほど遠くからだろう?誕生の門、
おぼろげな地平線、地上のすべての境界線を越えて、
  遠く―はるか―遠く?

言葉にはいかなる魅力があるのだろうか、いかなる言葉も持ったことのない魅力が?
ああ、消えゆく言葉たちよ、音楽はお前たちを生き永らえさせられるだろうか
  遠く―はるか―遠く?

 

 

2025.6.25
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/demeter/farfaraway.html

Leonine Elegiacs レオニヌス韻のエレジー連句

 

Leonine Elegiacs レオニヌス韻のエレジー連句

 

低い空のそよ風が、暮れゆく広い谷をさまよっている/
黒い幹の松の木を通して、遠い川のきらめきだけが見える。
花盛りのイグサや、満開のバラの茂みの陰を通り、
背の高いポプラの脇を抜けて、小川はさらさらと流れている。
牧羊犬は元気よく吠え/キリギリスは澄んだ祝歌をうたい/
森の鳩は深く/フクロウは甲高く鳴いている/
風が忍び寄り/冷たい露が落ちる。眠りに入ろうとする大地は静かに息をしている。
淀みの上ではブヨが日に映えて、かすかに呟き、嘆いている。
遠くで雌牛が悲しげに鳴いている。水はちらちらと光りながら流れ出している。
双子の峰と松が、暗いガラスのような水面に斜めに影を落としている。
低く座すヘスペロスは二つの峰の間にある/しかし軽くせわしく
拍動するナイアスは、その胸の下に彼を捉えている。
古の詩人は、ヘスペロスがあらゆるものをもたらし、
疲れた心を癒すと歌った。私の愛しいロザリンドを連れてきてくれ。
君は朝にも夕方にも来る/しかし彼女は朝にも夕方にも来ない。
盲目のヘスペルス、無情な者よ、私の愛しいロザリンドはどこにいるのか?

 

 

*ロザリンドはシェイクスピア「お気に召すまま」の女主人公の名前でもあります。ギリシャ神話においてへスぺロスは宵の明星、ナイアスは水の精です。
2025.6.25
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/juvenilia/leonineelegiacs.html

The Kraken クラーケン

 

The Kraken クラーケン

 

深い海の雷鳴のさらに下の、
遥か、遥か下の、奈落の底で、
クラーケンはその永く、夢見ることも、
侵されることもない眠りを貪っている。
その暗い影には微かな日の光さえ差すことがない。
頭上にうねるのは千年も成長し続ける丈の高い巨大な海綿/
そして遥か彼方の弱々しい光の下、
数多くの不思議な洞窟と無数の秘密の穴と
とても大きなイソギンチャクの中に微睡んでいる緑を
巨大な腕が扇ぎ出す。
眠っては巨大な海虫を食い荒らし
永らく彼はそこに横たわってきた、
そして最後の火が深海を熱する日まで
横たわり続けるだろう/
その時、彼は一度だけ人々と天使の前に姿を現す、
すなわち轟音とともに浮かび上がって、水面で死ぬのである。

 

 

2025.6.24
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/juvenilia/kraken.html

Adeline アデリーン

 

Adeline アデリーン

 

I.
謎の中の謎、
  かすかに微笑むアデリーンよ、
  地上のものでもなく、神でもなく、
不幸せでもなく、安らいでもいない、
  しかし亜麻色の髪を漂わせたあなたは
  言葉では言い表せないほどに美しい/
あなたのバラ色の唇と青く澄んだ目は
  私の胸から心を奪い去る。
 なぜそのようにおぼろげな姿なのか、
 影のような、夢見るアデリーンよ?

Ⅱ.
 悲しくも衰えていく太陽が
  光を差しかけるユリ、
 そしてそれに枝を垂れるバラの茂みのような
  その空虚な華やぎはどこから来るのか、
 日の入りを見つめる
  井戸の中のナーイアスのように、
 あるいは二時間前に世を去った
  その穏やかな唇がまだ冷めていない
  乙女の幻のように
 静かに微笑むあなたよ?
 なぜそのようにかすかに微笑むのか、
  神秘のアデリーンよ?

Ⅲ.
あなたの希望や恐れや喜びは何なのか?
誰があなたと話しているのか、アデリーンよ?
 きっとあなたはまったく一人ではないはずだ。
  噴き出す泉の脈打つ心臓が
 あなたの心臓と調べを合わせているのか?
    蝶たちが
  その羽の間で話していることを聞いたことがあるのか?
  あるいは、最も静かな夕暮れ時に
どのような声でスミレが
その花芯に銀の露を誘い込むのかを聞いたことがあるのか?
  あるいは、そよ風が吹くとき、
 陽気なアオツリガネソウが足下の苔に向かって
   どのように鳴るかを聞いたことがあるのか?
   あなたは日の出のときに
  ユリが息をするのを見たことがあるのか?
なぜそのようにかすかに微笑むのか、
影のような、夢見るアデリーンよ?

Ⅳ.
何らかの甘い語らいがあなたの心を育てている、
 ある深紅のバラの精は
 あなたに恋して、花びらを閉じるのを忘れ
 一晩中、何も見えない暗闇の中で
空しく香しい溜息をついている。
あなたは何に苦しんでいるのか?
誰を待っているのか?
その柔らかな、影のある眉で、
 そしてその露に光る瞳で、
 あなた、かすかに微笑む人、アデリーンよ?

Ⅴ.
あなたは空を見つめるとき
  悲しげな風を愛するのか?
 暁の傍らからさまよい出た
  声低く語る曙が、
   シバの香料を滴らせながら
 あなたの枕に低く身をかがめ、
  恋煩いのメロディアスなアリアとともに、
 あなたの顔に光を吹きかけ、
その垂れ下がった髪の房は
 あなたの首に絡みつく繊細な輪になり、
光の首飾りになって、
  そしてあなたたちは、
 春がキバナノクリンザクラの文字で
  丘に書くような言葉でまだ語り合うのか?
それゆえのその姿形と微笑みなのか、
   神秘のアデリーンよ。

 

 

2025.6.22
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/juvenilia/adeline.html

from The Princess: Ask me no more 「王女」より:もう尋ねないでください

 

from The Princess: Ask me no more
「王女」より:もう尋ねないでください

 

もう尋ねないでください。月は海を引き上げるかもしれません。
  雲は天から降りてきて、
  何層にもなって、山や岬を包むかもしれません。
しかし、ああ、あまりに愛しい人よ、私がいつあなたに答えましたか?
    もう尋ねないでください。

もう尋ねないでください:なんと答えればいいのですか?
  私はやつれた頬や色褪せた目を好みません。
  それでも、ああ、友よ、あなたに死んでほしくありません!
私があなたに生きよと命じてしまうことのないよう、もう尋ねないでください/
    もう尋ねないでください。

もう尋ねないでください。あなたと私の運命は定まっています。
  流れに逆らおうと努力しましたが、すべて無駄でした。
  大いなる川が私を大海へと連れて行くままにさせてください。
もうやめてください、親愛なる人よ、触れられたら私は崩れ落ちてしまいます/
    もう尋ねないでください。

 

 

2025.6.18
https://www.poetryfoundation.org/poems/45377/the-princess-ask-me-no-more

To Virgil, Written at the Request of the Mantuans for the Nineteenth Centenary of Virgil’s Death ウェルギリウス殿 啓上、マントヴァからの依頼によるウェルギリウス没後1900年を記念する詩

 

To Virgil, Written at the Request of the Mantuans for the Nineteenth Centenary of Virgil’s Death
ウェルギリウス殿 啓上、マントヴァからの依頼によるウェルギリウス没後1900年を記念する詩

 

ローマのウェルギリウス、
炎に包まれるイリオスの高き神殿、
イリオスの陥落、ローマの興隆、戦乱、
そして親孝行、ディードーの積み薪を歌った人/

風景を愛でた人、
「労働と日々」を歌った人(*ヘシオドス、BC700頃)よりも言葉を支配した人、
幾多の黄金のフレーズから、
選び抜かれた想像力の硬貨が輝き出る/

小麦と森を、耕地とブドウ畑を、
蜂の巣箱と馬と家畜の群れを歌った人/
すべてのミューズの魅力は
しばしば孤立した言葉の中に花開く/

ブナの木陰で笛を吹く
幸福な(*羊飼い)ティテュロスの詩人/
羊飼いが笑いながら花を巻きつけた
詩人の中の詩人サテュロス/

ポッリオ(*ガイウス、アシニウス、BC75-AD4、ウェルギリウスの後援者)の歌い手、
再び来る至福の時代に栄光を見いだし、
蛇のいない牧草地の夏、
労苦なき大地と櫂なき海を歌った人;

普遍的な精神に動かされる
普遍的な自然を見た人/
人間の不確かな運命を
気高く悲しんだ人/

消え去った時代の光/
この幻の岸辺を今も輝かせる星/
影たちの中の黄金の枝(*アイアネースの中の逸話)、
去って再び帰らない王たちと王国たち/

大海のうねりのようなあなたの音律が
永遠にローマ帝国を謳っているにもかかわらず—
今やあなたのフォルム(*公会広場)に歓声が轟くことはなく、
あらゆる紫衣の皇帝のドームは崩れ落ちてしまいました—

今や奴隷たちのローマは滅び、
自由民のローマがその座を占めています、
かつて全人類から隔絶されていた

北の島から来た私は、

あなたに敬意を表します、マントヴァの人よ、
私の人生が始まって以来ずっと、あなたを愛してきた私は、
人の唇が作り出した
最も荘厳な韻律の使い手に敬意を表します。

 

 

2025.6.19
https://www.poetryfoundation.org/poems/45391/to-virgil-written-at-the-request-of-the-manuans-for-the-nineteenth-centenary-of-virgils-death

In the Valley of Cauteretz コーテレッツの谷にて

 

In the Valley of Cauteretz コーテレッツの谷にて

 

谷中を流れる、
夜が深まるとともに声を潜める、白くきらめく小川よ。
お前の水が流れる谷中を、
三十二年前に、私は愛した人と歩いた。
私が今日、谷中を歩いている間、
三十二年は、流れ去る霧のようだった/
谷中で、岩だらけの川床で、
お前の生きた声は、私には死んだ人の声のようだった。
そして谷中で、岩や洞窟や木々のそばで、
死んだ人の声は、私には生きている声のようだった。

 

 

*コーテレッツはピレネー山中の地名
 テニスンは若い頃、早世した友人ハラムとこの地を訪れた。
2025.6.13
https://www.poetryfoundation.org/poems/45358/in-the-valley-of-cauteretz

To ― (”After Reading a Life and Letters”) 啓上 (『生涯と書簡』読後)

 

To ― (”After Reading a Life and Letters”) 啓上 (『生涯と書簡』読後)

 

「わが骨を動かす者に呪いあれ。」 シェイクスピアの墓碑銘

あなたは詩人の名声を得られたかもしれない、
もしそのようなものが今、勝ち取るに値するならば、
そして、私が要求できるものよりも完全な葉によって編まれた
月桂冠をかぶることができたかもしれない/

しかし、あなたは記録に残らない友人たちの群れ、
実り多い人生、静かなる声を経て
優雅な結末に向かう人生という、
より賢明な選択をした。

そして、あなたは詩人の王冠を被る者の
冷笑的な運命を逃れた/
今後、悪党も道化も
あなたの墓で乱痴気騒ぎをすることはないだろう。

今や詩人は死ぬことができず、
昔のように音楽を残すこともできない、
彼がまだ冷たくならないうちに
スキャンダルと叫びが始まる。

「彼が隠したであろう欠点を公表せよ。
錠を壊し、封印を破れ。信頼を裏切れ。
何も神聖なものとして残すな。
多頭の獣に思い知らせるのは当然のことだ。」

ああ、恥知らず!彼はただ歌ったのだ、
その価値が私たちを喜ばせた歌を。
彼は地上で公人ではなかった、
彼は目立った政治家でも王でもなかった。

彼は人々に最良のものを与えた。
彼の最悪なものを与えず、最良のものを与えたのだ。
彼の遺灰を休ませようとしない道化と悪党の上に
私のシェイクスピアの呪いあれ!

川岸や茨の小さな生命、
孤独な願望を歌い、
木の上で
誰にも聞かれずに死ぬ鳥である方が、

長く大きく歌い、栄光の神殿の門で倒れ、
ハゲワシがその心臓を引き裂くために
群衆の前で待っている者であるよりも
はるかに甘美であると思わせる者に呪いあれ!

 

 

2025/6/12
https://www.telelib.com/authors/T/TennysonAlfred/verse/englishidyls/afterreading.html

Late, Late, so Late 遅くなった、遅くなった、とても遅くなった

 

Late, Late, so Late 遅くなった、遅くなった、とても遅くなった

 

遅くなった、遅くなった、とても遅くなった!夜は暗く、身を切るように寒い!
遅くなった、遅くなった、とても遅くなった!それでも私たちはまだ入れてもらえるでしょう。
遅すぎる、遅すぎる!あなたたちはもう入ることはできない。

私たちは光を持っていませんでした。そのことを悔やんでいます/
そのことを知れば、花婿様は心を和らげて下さるでしょう。
遅すぎる、遅すぎる!あなたたちはもう入ることはできない。

光を持っていません。とても遅くなりました!夜は暗く、そして寒いです!
ああ、私たちを入れてください、光を見つけるために!
遅すぎる、遅すぎる!あなたたちはもう入ることはできない。

花婿様はとてもお優しい方と聞いておりましたが?
ああ、私たちを入れてください、遅くなりましたが、その足に口づけをさせて下さい!
いいえ、いいえ、遅すぎる!あなたたちはもう入ることはできない。

 

 

*参考:マタイによる福音書25章1-13節
2025.6.9
https://www.poetryfoundation.org/poems/45361/late-late-so-late